第四章 ダークサイドオブ嫦娥
第16話 月の罪人:前編
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さをひしひしと伝えるような形でもない。どこか不安感すら煽ってくるような言葉に言い表せないような異質な形であったのだ。
やがて、力だけではなく、その罪人本人すらその場に現れたのであった。
「この人が……嫦娥って人?」
確認するように勇美は皆に聞いた。それに対してヘカーティアは迷う事なく彼女に返す。
「ああ、間違いない。奴こそが私達がずっと追い求めている嫦娥本人だ!」
「この人がそうなんですね?」
ヘカーティアに言われて、勇美もそれに納得を見せるのだった。何となく、それだけでその人だと思わせるような存在感が嫦娥にはあったからである。
その風貌も目を引くものであった。服装は白一色の和服であり、更には髪も白のロングヘアーとなっていて、まるで氷細工を思わせるような繊細な芸術品と比喩出来るような代物であった。
加えて、顔には狐の面が被されており、その素顔を確認出来ない事も彼女の異質さを引き立てる要因となっているのである。
そんな異端の権化ともいえる嫦娥を見ながら、ヘカーティアはその口を開くのだった。
「久方ぶりだな、嫦娥よ」
その呼び掛けに対して、嫦娥は言葉を返す。まるで、言葉を発する事のない別の次元の存在にすら思えた彼女であったが、問題なくそれを行う事は出来るようである。
「ええ、久しぶりね」
その最低限の口調の挨拶からは、嫦娥がいかなる人格なのかを察する事は出来ない。そして、ヘカーティアの様子がおかしい事に勇美は気付くのだった。
「ヘカーティア様、どうして……」
「?」
その言葉を聞いてヘカーティアは訝しげに勇美の事を一瞥する。
それに対して重圧的なものを感じて怖気づきそうになる勇美であったが、この先は敢えて言っておかなければならないだろう。
「ヘカーティア様はあの嫦娥って人を追っていたんですよね」
「ああ」
「なのにおかしいじゃないですか? 今絶好の機会だというのに、どうして手を出さないのです?」
その勇美の疑問は至極真っ当なものだろう。それに対して答えたのはヘカーティアではなく、嫦娥本人からであった。
「お嬢さん、察しがいいですね。では私からお答えしましょう」
「……」
嫦娥に言われて、勇美は思わず無言で固唾を飲んでしまう。そうしてしまうだけの存在感が彼女からは感じられるのであった。
「それはですね。私の能力が『神を退ける』ものだからです」
「! そんな事って!?」
その能力明かしに勇美は驚愕してしまった。
何故なら、彼女は今まで神の力の強大さを幾度となくその肌で感じてきたからである。普段からその力を借りて戦い、時にその力と向き合い戦うという事までして行ってきたのだから。
その神を退ける事がいかに恐ろしい事か、勇美にはよく分かるのであった。
「これは……厄介ですね」
「あ
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