第四章 ダークサイドオブ嫦娥
第15話 炎の使者と地獄の変態:後編
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「さあ、待たせて悪かったわね。行くとしましょう」
「確かに芸達者な事をやってのけるが、文字通り『付け焼き刃』になってはいないかね?」
そう言うヘカーティアは、今まで剣の達人を何人か見て来て思う所であったのだ。
代表的なのは、冥界の二刀流を得意とする庭師であろう。彼女は師匠が雲隠れした後、健気にも独学で自身の剣術を磨いていったが故に、精神的に未熟な所があれど剣の腕は確かなものに仕上がっているのだ。
そういえば、そんな彼女の境遇を想って依姫は彼女に時たま剣術を教えに行くようになったっけとヘカーティアは微笑ましい気持ちで思い返す。今後が楽しみだと期待に胸を膨らませるのだった。
そして、彼女に剣術を教え始めた依姫その人である。依姫は神降ろしの力があるにも関わらず、剣の腕も抜かる事なく磨いていったのだ。真面目で堅実な依姫の性格が良い働きをした一端と言えよう。
それに対して、果たしてこの玉兎はどうだろうか? ヘカーティアはその答えをじっくりとその身で見据えていく事にしたのだった。
「付け焼き刃かどうかは、これを受けて見てから判断してもらいたいわね!」
言うとマチは剣を腰に構えると、体のバネを利用してヘカーティアの懐へと踏み込んで来たのだった。
しかも、自身の能力の火の力をその推進力とした上で。故にその瞬発力は並々ならぬものとなっていたのだった。
「はあっ!」
そして、その勢いのままにマチは腰に宛がった炎の剣をヘカーティア目掛けて振り抜いたのだ。
その攻撃に対してヘカーティアは咄嗟に右手に炎を灯すと、合わせる形でそれをぶつけた。
そして、そこに爆発が起こったのだった。その後マチは気付く。
「くっ……手応えはなかったか」
そう、彼女の得物が敵を捉えた感触はなく、ただただ爆発の衝撃しか彼女は感じられなかったのであった。
そして、爆発が止めばヘカーティアとの距離は再び開いていたのだった。そこから彼女は言葉を発する。
「いや、悪かったね、付け焼き刃じゃないかなんて言って。いや見事さ、踏み込みは洗練されていたし、そこに炎の推進力まで使っていたんだからね」
ヘカーティアにとって全くを以て、奇しくも『舌を巻く』内容だったのである。
自分の鍛練は怠ってはいない事実。それでいて自身の持ち味である火の能力を活用する事も忘れない。まさに理想の戦い方と言えるのだった。
「そう言われてもね、攻撃をかわしたあなたに言われても嫌味にしか感じられないわね」
「これは失礼したよ、気を悪くさせたみたいで悪かったね」
この事にヘカーティアは本心で反省点だと思うのであった。
どうも自分は依姫のように相手の心情に合わせる巧みさは備わってはいないようだと。比較的プライドが高い者達の集まりであった月ロケットの連中との戦いは実によくやったと感
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ