第四章 ダークサイドオブ嫦娥
第15話 炎の使者と地獄の変態:後編
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ない限り、こういった新たな存在を取り入れる事こそが幻想郷にとって有意義になる事をまだ新参者であるヘカーティアもよく理解しているのであった。
この事で一番喜ぶのは勇美の恩人の一人であるが胡散臭くて自分は馬が合わないあの最強クラスの妖怪である事は分かっていても、自分は幻想郷自体は受け入れている事実がある為に、そこへ貢献するのは義務だとヘカーティアは思っての事なのであった。
そして、プライドは高いが良い意味での要素の多いこの玉兎に対して発破を掛ける意味もヘカーティアは狙っていたのだった。
そうしながら彼女は思う所があった。自分の感性は依姫とは断じて違うものであるが、相手が本調子となり全力で悔いのない弾幕勝負にしたいという願望では同じ所があるのだと。これも勇美の影響が多々あるかも知れないと彼女は改めて感じる所である。
そして、問題はその発破に相手が応えてくれるかどうか……にあるのだ。何故ならこれは強制ではないからである。
あくまで本気を出す意気込みを持つかどうかは相手が決める事だからだ。これを無理強いしてしまえば、創作物の悪のボスキャラが好む理論である『私を楽しませてくれたまえ』というエゴになってしまうからだ。
そう思いヘカーティアはどう出るか懸念していたが……その心配はどうやらいらないようであった。
「あなたは随分と味な事が出来るみたいだけど……炎の専門家たる私をなめてもらっては困るわね」
その言葉を紡ぐマチの表情は、実に迷いのない晴れ渡ったものとなっていた。
「いい目をするね。私好みだ」
ヘカーティアはこう闘志の萎えないマチの事をいたく気に入るのだった。何せその様は勇美と似通っていて好感が持てるからであった。
「余裕を見せていられるのも、今の内よ」
言うとマチは懐から新たなスペルカードを取り出して発動する。
「【火剣「炎の舌・フランベルジュ」】!」
続けてマチは自分の右手を天高く掲げる。するとそこに炎が現出して集まっていったのであった。
だが、単に炎を産み出した訳ではなかったのだ。その光景を見ながらヘカーティアは興味深げに呟く。
「おやまあ、お前さん。そんな事が出来たのかい?」
そう感心するヘカーティアの目には、確かにそれが映っていたのだった。──見た目明らかに剣の形の得物がマチの右手には握られているのを。
これがマチのスペル『炎の舌・フランベルジュ』の力なのであった。こうして彼女は炎を集めて剣の形に練り上げてしまったのである。
その剣の形はギザギザの赤い刃で、正に『炎』といった外観で、加えて動物の『舌』にも見える名前に偽りのないものとなっていた。
そして、炎から剣を産み出すという本来の物理法則から逸脱した芸当をやってのけたマチは、その刃を一振りするとヘカーティアへと向き直ったのであった。
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