第四章 ダークサイドオブ嫦娥
第12話 満月の塔 SIDE:H 前編
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時はまたしても、勇美と鈴仙がそれぞれの担当の場へと向かった頃へと戻る。
そして、ここにも自分の向かうべき場所へと向かった者がいたのだった。
その名はヘカーティア・ラピスラズリ。正真正銘の地獄の女神である。そして、彼女はそんな今の状況を思い返して自嘲気味に呟くのだ。
「……まさか、この地獄の女神たる私が月の民のために行動するなんて思いもしなかったな……」
そう、彼女は女神という位置にあるが故に、直接民を助けるために動く等とは本来あり得ない話なのである。
ましてや、彼女は一度純狐と共に彼等に復讐を企てた身であるのだ。だから、自分は月の民へ一肌脱ぐ等という義理は全くといっていい程存在しないのだ。
だが、こうして今は月のリーダーたる綿月姉妹の指示の下に行動している。その理由の一つがこうである。
「まあ……今回事を起こしているのが嫦娥ならこっちも動かない訳にはいかないからな……」
そう、彼女と純狐の復讐の目標である嫦娥の存在があったからである。
ヘカーティアは自身の能力により嫦娥への執着を捨てられなくなってしまっている純狐よりも嫦娥へは固執してはいないのだ。
しかし、彼女とて嫦娥へ全く憎しみが沸かない訳ではないのである。だから、今回向こうから行動を起こしてくれたのは正に好機といえる事なのであった。
そして、純狐の事を思っての事でもあったのだ。今回の機会を活かして彼女と共に嫦娥との因縁に決着を着ける事が出来れば、何か今後自分達が変わっていく事が出来るのではないかという考えがヘカーティアには存在していたのである。
そして、もう一つの理由が……。
「勇美……か」
そう、自分達が事の発端となった月の異変を解決にはるばる地上から、玉兎と一緒にやって来た人間の少女、黒銀勇美の存在がヘカーティアの心境には影響しているのであった。
自分や彼女が敬愛する綿月依姫のような高いスペックを持っている訳ではない人間の少女である。だが、そんな彼女が神降ろしの力を借りる、玉兎の協力がある、スペルカード戦のルールの下に戦った……等の様々な要因があったものの、自分と純狐に対して勝利を収めたのだから。
それは実は月の重役、稀神サグメの『口にすると事態を逆転させる能力』の影響下にあったからというのもあるのである。
だが、それでも彼女達が自分を打ち破った事には変わりはないのだ。その事をヘカーティアには断じて否定するような心は備わってはいなかったのだ。
そして、勇美に対して思う所は、何も彼女の潜在能力だけではないのだ。
それは、彼女の人柄であった。一途でひたむきな姿勢は、自分達が忘れかけそうな要素だったのである。その事を思い起こさせてくれた勇美には感謝の念すら覚える所なのである。
「……この私が人間にここまで思う所が出て来るなんてね」
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