第四章 ダークサイドオブ嫦娥
第12話 満月の塔 SIDE:H 前編
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そうヘカーティアは独りごちながら哀愁を噛み締めながらも、この気持ちは大切にしなければと思いながら、今もその勇美が行動を始めている頃だと思い、自分もそれに倣うべく動き始めるのだった。
◇ ◇ ◇
「……ここが塔の中……なのよね?」
ヘカーティアは思わずそう呟くのであった。そうせざるを得なかったのである。
そう、この『満月の塔』も、半月の塔のように、『とても塔の内部とは思えないような構造』であったという訳なのだ。
寧ろ、今の光景を目の前にして、ここがはい塔の中ですと言える人の方が神経がどうかしているだろう。
まず、足場は半透明な水晶を加工したような物で構成されているのだ。それだけでも塔の内部とはかけ離れていると言えよう。
だが、それだけでは物足りないと言わんばかりに、辺りは東西南北、上下左右見渡す限りの宇宙空間のような様相なのである。
そう、上下左右ですらあるのだ。上は勿論、下にまで果てしなく宇宙空間は広がっているのだった。
そこに、先程の水晶の足場が宙に浮くかのように至る所に存在しているのだ。
もしこれを勇美が見たら、こう言うだろう。『まるでRPGのラストダンジョンみたいだね』と。だから、ヘカーティアはしみじみとこう呟くのだった。
「これは、勇美に見せてあげたら喜ぶかもねぇ……。まあ、あの子も別の塔で目を引く光景を見て楽しんでいる事でしょうけど」
楽しむ。任務にありながらそれを自身の喜びとしながらこなしてしまう。ヘカーティアはそんな勇美のポテンシャルを改めて見習うべきだと心の中で再評価するのだった。
そして、勇美は実はこれから先の任務で今のヘカーティア程の冒険はしないのである。だから、後にもし彼女がこの事をしれば血涙を流さんばかりの事態となるだろう。
それはさておき、ヘカーティアはこの『ラストダンジョン』然とした塔の攻略へと向かうのであった。
◇ ◇ ◇
「……私の担当する地獄でもこんな光景はそうそうお目に掛かれないってものよねぇ……」
そう感心しながらヘカーティアは常軌を逸した塔の中を歩いているのだった。
辺りは全て宇宙空間で占められている中を、頼りなさげな水晶の足場を渡っていく。これには地獄という、現世の常識が通用しない世界の支配者たるヘカーティアとて刺激的な体感となるのだった。
そして、水晶の足場を彼女は基本スタイルである裸足で練り歩いているのである。その事に彼女は背徳的な快感を感じるのだった。
ヘカーティアは常に裸足でいる事が多い為、その足の裏は鍛えられているのである。
だが、それでも素足で今のこのような場所を踏みしめるのは彼女にとっても刺激を感じさせてくれるのであった。その事に彼女は心を踊らせるのだ。
だが、その悦びもそこそこにして先を進まねばならないだ
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