第一章 幽々子オブイエスタデイ
第8話 『魔王』光臨:後編
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「どうした? 何も仕掛けられないのかい?」
行動を起こさない依姫に対して、レミリアは傘を指しながら宙に浮き余裕の態度を示していた。
それを依姫は一瞬睨み付けるが、すぐに表情を和らげて言った。
「私が神降ろしで攻撃すれば、貴方は必ず一撃で負けるでしょう。
だから貴方の技もすべて見てからでも遅くはない。
貴方も肉弾戦ばかりじゃなくてスペルカードを使ってみたら? 美しいスペルカードを」
依姫は挑発的に言ってのけるが、内心この戦いに心踊っていたのだ。遊びだが本気でやりあえる『本気の遊び』に対して。
玉兎達から聞いた地上の娯楽では、目の前の吸血鬼は物語の最後に現れてそして滅ぼされる、所謂『魔王』のような存在を彷彿とさせるのだった。
滅ぼすとは息の根を止めてこの世から葬り去る事である。
そのような対処を取らないといけない存在と血を流さずに戦えるこのスペルカード戦を嬉しく思っていたのだ。
また、依姫は魔王が登場するものとは別の娯楽を思い起こしていた。
それは『怪人』と呼ばれる者が登場する娯楽で、役者のアクションシーンをふんだんに取り入れ、最後には『必殺技』なるもので一撃の下倒されるというお約束のある見せ物であった。
依姫はそれを再現しようとしていたのだ。勿論これは現実であり、演技からなる見せ物とは違う。
だが彼女は玉兎達に自分の戦いを見せている事を忘れてはいなかったのだ。見せる戦いではただ勝つだけではいけない、それが依姫がエンターテイメント──娯楽──において心掛けないといけないという考えであった。
一方、挑発的な台詞を投げ掛けられたレミリアはカチンときていた。
「ふん!」
鼻で息を吐くとレミリアは両手から紅色のエネルギーを放つと、それを辺り一面に展開したのだ。
「【夜符「クイーン・オブ・ミッドナイト」】」
スペルカード宣言だ。このスペルにより辺りは夜の帳が落ちたような闇に覆われたのだ。
レミリア自身は元の姿であるが、それはさながら魔王の『第2形態』とでも言うべき演出であった。ここから魔王の攻撃方法が変化するのだ。
「永遠に明けない弾幕の夜を、悪夢の度に思い出せ」
そして芝居がかった台詞。ボスキャラとしての雰囲気が十分に出ていた。彼女もエンターテイメントの才能があるのかも知れない。
そして、彼女の周りを衛星のようにエネルギー弾が飛び交っていた。それを依姫は無言で見ている。
暫し続く沈黙。だがそれは当然破られる事となる。
「くらえっ!!」
そして動きは起こったのだ。レミリアの掛け声と共に紅弾が次々と射出された。
「大御神はお隠れになった。夜の支配する世界は決して浄土にはなり得ない」
弾をかわしながら、依姫は呪文のように言葉を紡ぎ始めた。
「『天宇受売命』よ! 我が身に降り立ち、
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