第一章 幽々子オブイエスタデイ
第7話 『魔王』光臨:前編
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ていなかったが如く跡形もなくなった。
「へえ、やるじゃないか」
「私の八意様仕込みの剣捌き、嘗めないで欲しいわね」
そう言葉を返しながら、依姫は今は月から遠く離れた地上にいる師の事を想った。姉と同様に彼女の存在抜きには今の自分は有り得ないと心の中で噛み締めたのだ。
このまま自分のペースに持ち込んでみせる、依姫はそう意気込んだ。師へ応える為にも。
「まあ、槍は別に私の十八番って訳じゃないんだよね」
だが、吸血鬼から紡がれた言葉は依姫の予想に反するものであった。
「じゃあ、私の本領を発揮するとしますか!」
そしてレミリアはコキッコキッと関節を鳴らして準備動作をした。いかにも余裕綽々といった態度で。
その動作も終えると、レミリアはその場で両足を踏み込み──そのまま宙へと飛び立ったのだ。
「!」
意表をつかれた依姫。だが驚く事ではないのだ。幻想郷では多くの者が空を飛んで戦うと魔法使い言っていた。彼女は箒を使って飛んでいたが、自力で飛べる者が多いという事なのだろう。
レミリアは武士道に徹する気はないのである。故に相手が飛ばなくても自分は飛んでやろうと思ったのだ。
どんな手段を用いても勝利をもぎ取る、それが彼女流の信念であった。それに加えて依姫は咲夜と魔理沙に勝っているのだ。そこに自分が出し惜しみする道理はなかった。
そしてレミリアは宙で静止しながら相手を俯瞰し、目標を補足した。
「それじゃあ、これでも喰らいな!」
言うとレミリアは頭を向けて依姫に飛び掛かったのだ。──それは『体当たり』。馬鹿げた発想であるが、その思い切りとレミリアの身体能力から脅威となった。
まるでジェット機のように空を切り依姫に突撃していくレミリア。
だが依姫とて易々とその攻撃を受ける気はなかった。レミリアに刀を合わせ斬り掛かったのだ。
その瞬間、暴風のような衝撃が巻き起こった。余波で木々がざわめく程であった。
ぶつかる力と力。それは暫く均衡していたが、徐々にその差は開いていった。
「くっ!」
力の押し比べに負けたのは……依姫の方であった。得意の長物を持ったその手が衝撃に耐えきれず弾かれたのだ。
攻撃を防ぐ手段を押し曲げられた依姫は体当たりを見事に受けてしまった。
「っ!!」
衝撃の余りよろめく依姫。だが相手は容赦がなかった。体当たりの一撃目を喰らわせたレミリアはその反動で再び上空に浮かび上がり、依姫との距離を取ったのだ。
「もう一発行くよ!」
そして高らかにレミリアは宣言した。またしても吸血鬼は弾丸と化して依姫を襲う。再びダメージを依姫は負った。
突撃しては距離を取る。その動作を繰り返し、レミリアはじわじわと依姫を追い詰めていったのだ。
それが暫く続いた後、レミリアは何を思ったのか空高く舞い上がり、ど
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