第一章 幽々子オブイエスタデイ
第7話 『魔王』光臨:前編
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た。
「では、今度はこちらから行かせてもらうわよ」
そう言って構えたのは依姫の方であった。一端刀を腰の鞘に納め、抜刀の体勢をとったのだ。
「はあっ!」
そして掛け声と共に右足をレミリアの方向に踏み込み、それと同時に刀を鞘から抜き彼女に振り抜いた。
手応えは──あった。レミリアは確かにこの一撃を受けていたのだ。しかし。
「余り利いてないみたいね……」
「吸血鬼の身体を嘗めてもらっちゃ困るよ」
攻撃は確かに入った。人間が相手だったら大怪我をしていた所だろう。だが吸血鬼のレミリアにとってはかすり傷程度のものであった。
「でも、この私に攻撃を当てたんだ。それには敬意を払わなくっちゃいけないな」
ピクッ。レミリアのその言い方に僅かながら反応してしまう依姫。
そんな彼女の目の前にいるレミリアは右手を眼前にかざすと、そこにもやのようなものが現れ始めた。
──それは依姫は知らないが、レミリアが幻想郷で起こした異変の紅い霧そっくりであった。
まるで水の中に溶かした血液のように漂うそれは、だんだんとはっきりとした形を取っていったのだ。
──それは『槍』の形であった。長く立派な胴体、血のように赤くありながら金属の光沢を持つそれは、禍々しくありながらもどこか神秘的であった。
レミリアは宙に浮いていたその槍をパシッと勇ましく掴むと、依姫に対してそれを向けながら一気に距離を詰めたのだ。
ギュウウンと音を出し、鋭く空を切りながら依姫に迫る槍先。だが依姫は間一髪それを刀で受け止めた。
「長物を使えるのが自分だけだと思ったかい?」
「くっ!」
だが、レミリアの軽口に返す余裕はなくなっていた。
そして突き、引っ込め、突き、と槍の猛攻は始まったのだ。さながら蜂のように刺すという表現がしっくりくる程に。
しばらく依姫は槍の攻撃を何とか刀で受け流していた。
(……)
それを行いながら依姫は、段々ある事に気づき始めていた。
──槍の持ち方がでたらめだと。剣にしろ槍にしろ武器というのは扱いに精密さが要求されるものだ。
だが、この吸血鬼はその膂力に任せて力で振り回しているのだった。そこに依姫は勝機を見出した。
「そこっ!」
そう掛け声を上げると同時、依姫は刀に体重を乗せつつレミリアの槍の持ち手を狙ったのだ。
「!!」
この的確な対処にレミリアは意表を付かれてしまった。そして手に持った槍を思わず離してしまったのだった。
痛みは吸血鬼である彼女にとっては大した事はなかったのだが、まさかこうも巧みに持ち手を狙い打たれるとは意識していなかったのだ。
そして弾かれた槍は歯車のように回転しながら宙を舞い、最後には綺麗に地面に刺さった。
すると槍は再び霧となってその場でかき消えたのだ。そして、まるで最初から存在し
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