第一章 幽々子オブイエスタデイ
第5話 気高き龍
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るナイフの群れ。
「も一つおまけの、【速符「ルミネスリコシュ」】」
それに加えて咲夜は『スペルカード宣言』をした。
それによりナイフの群れはまるで意思を持っているかの如く、すばしっこく依姫の周りを飛び交い──全て彼女に刃を向けて包囲したのだ。
だが依姫は動じていなかった。相手がナイフという金属なら……。
「『金山彦』よ。私の周りを飛ぶうるさい蠅を砂に返せ!」
生き物のように牙を向く危険な存在に対して、まるで虫ケラのように言ってのける依姫。それだけ、これから使う神の力には信頼があったのだ。
そしてそれは起こった。銀のナイフ全てが風化したかの如く粉のように散っていったのだ。
咲夜はポーカーフェイスを保っていたが、その驚きは否定する事は出来ないでいた。
「なっ!」
「ほー、便利ねー」
驚きの声を出す魔理沙に、暢気そうに言う霊夢。
続いて依姫は咲夜に刀を向け、
「そして、持ち主の元へ返しなさい」
と宣言した。
すると、先程散った筈のナイフの群れは、さらさらと音を立てて元の形を取り戻していった。──刃先を全て咲夜へ向ける形で。
それは金山彦命が金属を司る神であるためであった。ちなみに、金属の神であるが故に金運に御利益がある神としても祀られているのである。
当然咲夜としてはたまったものではないだろう。
「ま、まさか自分のナイフを、避ける羽目に、なるとはね!」
咲夜は言葉途切れ途切れに懸命に、本来自分の得物である筈のものを避けていく。
「避けにくいのは当然ね、しょうがない……」
そう言った咲夜を依姫は注意深く視線を送っていた。
「いざ!!」
そこに火雷神の豪雨が降り注ぎ、咲夜はたじろぐ。
「『私の世界へ!』」
だが、余力を振り絞ってそう宣言した。
そして咲夜は得意の術を発動する事に成功した。だが──。
眼前には隙間ないナイフと豪雨と稲妻。こうなってしまっては彼女の『術』を以てしても対処は出来ないのであった。咲夜は潔く白旗を上げる事にしたのだ。
この瞬間依姫のスペルカード戦初勝利が決まったのだった。
◇ ◇ ◇
見事勝利を納めた依姫を祝福すべく、彼女の周りには玉兎達が取り囲んでいた。その傍らでは半分焦げながらレミリアに睨まれてる咲夜の姿があった。
「強いですわー。まさか自分の投げたナイフにやられるなんて、飼い犬に手を噛まれるとはこのことですね」
「ふん!」
先程の戦いで堪えたのを感慨深く、どこか遠い目で語る咲夜にレミリアは面白くないといった様子で鼻息を漏らして聞いていた。
「咲夜、駄目じゃないの」
「申し訳ございません」
当然咲夜は謝る。主の期待に添えなかったから……。
「咲夜がいきなり大技使うもんだから、一発で勝負がついちゃうと思ったじゃない!」
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