第一章 幽々子オブイエスタデイ
第4話 提案
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──圧倒的に実戦経験不足。そう依姫は玉兎達に言った。
だが、それには自分自身にも非がある事を彼女は心の底で痛感していた。
兵隊を戦わせたい場合は敵を悪に仕立て上げるのが手っ取り早いのだ。それを互いの国が行うのが『戦争』というものである。
『前に地上に行った時はさー』かつて訓練を──さぼりながら玉兎の一羽が言っていたのを覚えているだろうか?
何気ない一言。だがそれは玉兎が地上を悪と認識していなかった事の裏付けとなり、依姫がそう教えていなかった事の証明となるのだ。
兵士を育成する役割を担う者として、それらが一体となり鍛錬に励み力を付ける事を望むものである。しかし、敵を悪者にしてまでそれを行いたくはないと依姫は考えての事であった。
しかし、こうして今まさに敵が牙を向いてこちらに乗り込んで来てしまったのだ。
これからは敵がいかに驚異であるかを玉兎に教え込み実戦を想定した鍛錬をさせなければならないだろう。
だが、この場は私自らの手で対処しよう、依姫はそう覚悟を決めたのだ。自分の撒いた種は自分で摘まなければならない。
──話を現在の状況に戻そう。
依姫は咲夜の未知の力によって背後を取られ羽交い締めにされ、それを侵略者の指導者レミリア・スカーレットは得意気に俯瞰していた。
誰にも依姫の危機に見えるだろう。だが、彼女の表情には余裕が見えていた。
「……八意様の言っていたとおりね。増長した幼い妖怪が海に落ちてくると」
「?」
そう言ってのけた依姫に、レミリアは疑問符を浮かべて首を傾げた。
「貴方、さっき私の手癖が悪いって言ったわね?」
背後の咲夜に依姫は言った、次の瞬間。
突如として、依姫の両手から炎が吹き出したのだ。
「「!!」」
それを見ていた霊夢と魔理沙は驚愕し、咲夜はたまらず後ろに身を引いてしまった。
「気がつくと桃に手を伸ばしている、お姉様ほどじゃないと思うけどね」
咲夜を払いのけ、したり顔で言ってのける依姫。それを咲夜は頬に汗を浮かべながら身構えていた。
「そんなちんけな火、怖くも何もないでしょ? 何ひるんでるのよ!」
隙を作ってしまった咲夜に対して納得がいかず、レミリアが声を荒げた。
「これは小さく見えても愛宕様の火、すべてを焼き尽くす神の火なの。地上には、これほど熱い火はほとんどない」
依姫は火を自在に操り、籠手のように右腕に纏わせながら言ってのける。
その言葉通りこの火は松明のように厳かで慎ましく見えるが、爆弾など比べものにならない火力を有しているのだった。
「なんだって、愛宕様の火だって?」
そこで霊夢が言葉を発した。
「さっきは祇園様の剣って……もしかして、あんたも私と同じ──」
「そう、私は神々をその身に降ろして力を借りることができる」
それが依姫の
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