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MOONDREAMER:第一章(ノベライズ作品)
第一章 幽々子オブイエスタデイ
第1話 月の守護者と兆候:前編
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◇ ◇ ◇

「お姉様?」
 呼びかけるのは『神霊の依り憑く月の姫』綿月依姫である。
 そう──冒頭で神霊を使役した修練を行っていたずばりその人である。
『お姉様』……。その言葉が示す通り、彼女は豊姫の妹なのである。神霊を用いて激しい修練をしていた者と先程無邪気に桃を追い回していた者と……信じられないかも知れないが二人は『姉妹』なのである。
「また新しいペットですか? もういい加減にして下さいよ」
「残念ながら、ペットじゃないわよ」
「ペットじゃありません」
 少し呆れたようにいう依姫に対して反論する豊姫と兎。
「それに、その桃だって庭に成っていた奴でしょ?」
 またも呆れたように依姫は言った。
「もうちょっと熟れたら、全部取って宴会を開こうと思ってましたのに」
「まあまあ、それよりこれを見てよ」
 そう言って豊姫は兎から手紙を取り上げた。
「手紙? ……!」

◇ ◇ ◇

 そして三人は屋敷の客室へと移動していた。
「なるほどね。八意様は地上で元気にしているようで何よりです」
 笑顔で豊姫は兎に言う。
「地上に逃亡した八意様を許されるのですか?」
「許すも何も、あのお方は私たちの恩師です」
 兎の問いに豊姫が答えた。
「──燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや」
 そのやり取りに依姫が入り込む。
 その意味は小人物には大人物の心中をうかがい知ることができないということである。
 綿月姉妹は月を守護する役職にまで登り詰めたが、それでもまだ恩師には及ばないという気持ちから発せられた言葉だろう。
「私たちから見たら地上に追放された形になってるけど、間違ったことをする方じゃないからね」
「もちろん建前上は月の使者のリーダーである私たちが討伐しなければならない相手、ということになっていますが……きっとその日は永遠に来ないでしょう」
 そんな依姫と豊姫の意思を聞いて、兎はほっとしていた。だが。
「でも、貴方が地上に逃げた罰は与えなければいけません」
「え?」
 依姫のその言葉に驚く兎。
「あ なんで?」
「月の兎には課せられた仕事があるはずです。それが嫌だから逃げてしまえば、罰があるのは当然のこと。貴方の仕事は餅つきだったはず」
 きつめの口調でいう依姫。それは兎に言うと同時に自分にも言い聞かせているのだ。
 ──自分は自分のやるべき事を抜かりなくこなす。依姫がそれを身を持って知る事となるのはもうしばらく先の話である。
 そう冷徹な態度で諭していたのもつかの間であった。綿月姉妹は思わず口を手で覆いながら笑いをこぼし始めたのである。どうやら兎を本気で追いつめる気はなかったようだ。
「貴方への罰は、『この宮殿に住み私たちとともに月の都を守る事』。餅つきの現場に、もう戻れないでしょ?」
 そう
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