第一章 幽々子オブイエスタデイ
第0話 神の依代
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荘厳な屋敷の敷地の中に存在する広大な演習場。そこに佇む一人の女性がいた。
藤色の髪をクリーム色のやや大きく尖ったリボンで束ねてポニーテールにし、服装は白の半袖のカッターシャツに赤褐色の右肩だけ存在するワンショルダーのワンピースを纏っている。そして左手首にはその太さより一回り大きいのにどういう原理でか落ちる事なく固定されている金色のブレスレットが二個存在している。
彼女は何をしようとしているのだろうか。演習をしるのなら一人では出来ないだろう。
と、彼女はおもむろに目をつむり、何かを念じ始めた。すると彼女の体から何やらオーラのようなものが漂い始めた。そして彼女は言葉を紡ぐ。
「祇園様よ、我の前に姿を現したまえ」
そう言った直後の事である。彼女の目の前に誰もいなかった筈が、何者かが姿を現し始めたのだ。
この演習場は隠れられる物陰は存在しないので、断じてそこからひょっこりと姿を見せたのではない。何もない場所にエネルギー体のようなものが集まり、徐々に人の形を作っていったのである。
そしてとうとう完全に人の形となったのである。
その見た目は筋骨隆々な屈強な大男であった。そして手には大きめの刀を携えている。
「では、参りますよ!」
姿を現した大男に、その女性は話しながら──刀を向けた。そう、彼女も女性でありながら刀を携えていたのだ。
それに呼応するように、大男もまた自分の得物をその女性へと向けた。
──それが試合の合図であった。
◇ ◇ ◇
「はあっ!」
まずは女性から動きを見せた。利き腕は右手であるため、右足を踏み込み軸にして体を乗せて相手に向かっていったのだ。
ぶんっ! そして振り下ろされる彼女の愛刀。だが当然大男はその攻撃を許す筈がなかった。その刃に合わせるように彼の大刀も引き抜かれる。
そして交わる刃と刃。双方に電気ショックのような衝撃が走り、引き裂くような音と橙色に輝く火花が派手に巻き起こった。
「くっ!」
衝撃に少し気圧される女性。だが彼女は怯みはしなかった。休む事なく次の剣撃が放たれる。
第二波、第三波、次々に振り抜かれる彼女の刃。だが大男は難なくそれを全て、自分の大刀で切り払ってしまう。
そこへ大男は渾身の力を込めて大刀を振り抜いた。それにより暴風の如き剣圧を放ちながら刃が放たれたのだ。
彼女は刀を扱うとはいえ、女性である事は否定のしようがなかった。──どうしても膂力では鍛え抜かれた男性には劣ってしまうのだ。ましてや目の前の屈強な大男を前にしては尚の事であった。
実は彼女は『人間ではない』のであるが。その為、身体能力は我々の認識する女性に対するイメージの範疇には収まらないのである。
しかし、目の前の大男もまた人間とは異なる存在である。故に『人間を凌駕する性能の肉
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