第一章 幽々子オブイエスタデイ
第0話 神の依代
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体』は彼女だけの特権ではなくなっているのだ。
そして大男の一撃にその身を弾き飛ばされる女性。だが彼女もただでやられはしなかった。宙で後ろに一回転をし、見事に地面に着地し、ダメージは最小限に留められたのだ。
「はあ……はあ……」
だがその膂力の差はじわじわと開かれていた。息を荒げている彼女の方が明らかに分が悪かった。
しかし、彼女の強みは剣捌きだけではないのである。彼女は意識を集中すると、大男が現れた時のようなオーラがその身を包んだ。
「天宇受売命よ、我に舞いの如き身のこなしを与えたまえ」
そして紡がれる言葉。それに伴い再び何者かが彼女の側に現出したのだ。
その姿は羽衣を纏い、体には下着の如く最低限の生地しかない服を身に付けた妖艶な女性であった。するとその者は言葉を発した女性へと吸い込まれるように姿を消したのである。
その直後、大男から再び剣撃が放たれた。その攻撃を続けられたら今までの彼女の様子からして不利であろう。
だが、状況は変わっていた。その刃を彼女は舞う木の葉のようにひらりとかわしたのだ。
偶然だろうか? しかし、それは違うという事が次の展開で証明されていった。
二撃目、三撃目、次々と繰り出される大男の剣撃。だがそれは暖簾に腕押しの如く全てのらりくらりと彼女に回避されたのだ。
そう、これが彼女の真の強み──神霊をその身に降ろして力を借りる能力である。
先程の妖艶な女性は天宇受売命と呼ばれる舞いを得意とする女神、そして目の前の大男も祇園様と呼ばれるかつて暴力性と英雄性を轟かせた荒神なのだ。
つまり、彼女はその能力で神相手に稽古をつけてもらっているのだ。そして先程は神の力を借りて戦況を一変させたのである。
だが、英雄となった神は多少の事では怯まないのである。彼の攻撃は収まるどころかますます激しさを増していったのだ。
しかし、既に戦いの流れは女性へと向いていた。彼女は自分から力で攻めるよりも、相手の攻めを切り崩して道を開くのが自分のモットーとする事なのだから。
そして、その狙いは成功の兆しを見せようとしていた──祇園様の振るう大刀が一瞬、大振りになったのだ。
それを彼女は見逃さなかった。そしてきっと目を見開き、言葉を紡ぎ始める。
「天津甕星よ、我が剣に燦然たる輝きの刃を備えたまえ」
その言葉に呼び寄せられるように、彼女の隣に男性が現れた。
黒の長髪に黒の着物と、何かと黒い出で立ちはそこはかとなく堕天使を彷彿とさせる。容姿は整った美男子であり、祇園様と比べなくても優男のイメージは覆せないだろう。
だが、ここまで読み進めている者にとって、神の姿でその能力を測る事は出来ない事は既に揺るぎない事実であろう。
そして、天津甕星と呼ばれた者
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