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艶やかな天使の血族
1部 艶やかな天使
1話 艶やかな天使

[2]次話
「ハアッ…ハアッ…アウッ…エリオット…エリオットさん…」
「どうした…?相変わらず…熱に浮かされた顔をして…蕩けた顔を晒して…」
「ハアッ…ンンッ…エリオットさんのキス…虜になりそう…!」

 薄暗い寝室。
 趣味のいいクイーンサイズのベッドで私は今、この人に抱かれている。
 ジオン公国軍、技術少佐、エリオット・レム。彼と共にベッドでこの身体を隅から隅まで舌を這わし、私の身体を味わう。汗の匂いを感じる。激しいキスに溺れる度に私達は戻れない快楽を貪り合う。
 いつも囁く言葉は決まっている。
 
「まるで…君の体液は…大輪の花から流れる甘い蜜のようだ…」
「俺を夢中にさせる蜜…頭の芯から痺れる感覚…一体…君は何者なのだろう…?」

 クイーンサイズのベッドに横たわる私達は今は二人で逢瀬の関係を楽しんでいる。
 彼は身体中にキスの雨を降らせ、滑らかな器用な指で花びらをかき混ぜる。
 その度に、欲情が溢れるのを感じる。
 この人にすべてを奪われたい。
 こころも身体も魂さえも……。
 なぜ?こんなにも夢中になれるの?
 もう、恋は沢山なのに。
 もう、男の都合に合わせるの、沢山なのに。
 これもすべて…私の運命だったのかな?
 もし、そうだとしたら…嫌だな。
 細かい理性が身体に感じる筈の快楽を鈍らせる。 
 だけど、目の前の男性は情熱的な瞳を優しく輝かせ言ってくれた。

「何か考えていたね。何も考えなくていい…。今は俺に夢中になって?」

 抑え難い快楽が雪崩れ込む。
 まるで燃えるような快感が全身を支配して…はしたない顔をしているのね。
 でも。エリオットさんは…そのはしたない顔をこう褒めてくれたの…。

「存分に味わう快楽は気持ちいいだろう…?答えは聞かない。俺はこの身体に君を刻み込みたい。どんなに世間が騒がれても。だから…君の身体を抱かせて欲しい……」 

 絶頂を味わい、目が虚ろになる目の前の男性。
 快楽に顔を歪めるこの人は綺麗過ぎる。整った顔が気持ち良さそうに歪む。
 汗に滲んだ額。
 頭髪の銀髪が暗闇で妖しく輝く。
 そして、また激しく唇を絡ます。 
 これは、恋なの?
 これは、ただの遊び?
 この人は既婚者だ。
 大学生の頃から付き合っていたという、その女性一筋の男性。 
 でも、今は違う。
 今は違う。今だけが違う。
 
 そもそも私は、この人の一家の都合でここに来たの。
 艶やかな天使の血族に。
 はじまりはいつも唐突だった。 
 この人に会えたのも偶然だった。
 でも、今にして思えば、偶然では無かったのかも知れない。
 必然だった。私は艶やかな天使の血族からは逃げられないのだ。
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