救星主
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煉獄の光は、シンフォギアのアンチシステム。
今のガングニールは、生前に仲間の改修のおかげで、変身解除だけで済んだ。だが、未来の方はそうはいかない。
二度目の神獣鏡の光は、彼女からまたしてもシンフォギアシステムを奪った。生身のまま、未来はムー大陸の大地へ転落していく。
「未来……未来ぅぅぅぅぅぅ!」
未来へ、響は手を伸ばす。だが、記憶の再現である未来は、無情にも響を魂のこもらない目で見返していた。
「響……響っ!」
その言葉にどんな気持ちが込められているのか、響には分からない。
ただ一つ確かなこと。それは、落下しながらも未来は響の名前を叫んでいること。
それは、バングレイが本来想定していた、響の記憶から呼び起こした先兵と、響が望んでいる本物の未来の間で揺れ動いているということ。
もう一度、響は手を伸ばす。
ムー大陸から跳ね返る風が、響の体を容赦なく未来から遠ざけようとしてくる。
だが、それでも響はその手を下げない。
「本物かどうかなんて関係ない! そこに、掴める手があるのなら! 私は迷わず掴む!」
「……響……」
憑りつかれたかのように、未来は響の名前を繰り返す。伸びた手を跳ねのけ、未来は頭を抱えた。
「うっ……ああああああああああああああ!」
落下しながらの未来の悲鳴。それを聞くと、心が締め付けられていく。
そして。
「未来うううううううううううううううううううううううううううううう!」
ムー大陸全土に届く、響の大声。それは、未来にとうとう追いつき、その腕を掴んだのと同時だった。
「未来、私だよ! 立花響! 私のこと、分かるよね!」
「響……?」
未来は目を大きく見開く。拒絶の表情を見せるが、それでも響は続けた。
「未来が……私は、今でも未来が大好きだよ! だから……私が大好きな人が大好きなこの拳、絶対に未来を助ける!」
抵抗する未来。だが、響はそれでも、未来を掴む手を放さない。
そのまま、響は未来を抱き寄せる。
それが正しいことなのかどうか、響には全く分からなかった。だが、ただ一つ。響にできること。
それは。
「未来ッ!」
彼女の耳元で、その名を呼ぶこと。
そして。
「未来……」
響は、未来の肩を掴みながら、はっきりとその目を見た。
ハイライトのない、黒い目。そこには、口をきっと結ぶ自身の顔が見えた。
「……、……」
「……」
どうして未来の動きが止まったのかは、分からない。落下中の風が邪魔なのか、抵抗する気力がなくなったのか。
ただ。未来は、黙っていた。
黙って、響の歌を聞いていた。
___仰ぎ見よ太陽を___
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