第七話 入学式の後でその七
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「名刺差し出されて」
「アルバイトもなの」
「そう、誘われてるの」
「速水さんの占いの?」
「お店にね」
そこにというのだ。
「誘われてるの」
「そうだったの」
「それでうちに来て正式に採用したいってね」
「お母さんにお話するの」
「お父さんにもかしら」
「あの速水さんにね」
東京でも知られた占い師であることからだ、母は言った。それは信じられないというもので顔にも出ていた。
「凄いことになったわね」104
「あの人そんなに有名なのね」
「雑誌でも時々出る位よ」
「雑誌で?」
「連載も持っていてね、占いは当たるし凄い美形で」
「そうそう、美形だったわ」
母の言う通りだとだ、咲は答えた。
「背も高くてね」
「雑誌の写真の通りなのね」
「雑誌の方は知らないけれど」
「美形だったのね」
「何かホスト風の」
これは咲の感じた速水を見た印象である。
「青いスーツと裏地が赤の白いコートで決めた」
「それで左目を髪の毛で隠してる?」
「そうした人だったわ」
「間違いないわ」
まさにというのだ。
「その人よ、よくそんな人があんたに声かけたわね」
「何かアルバイトの娘がそこにいるってね」
咲は母にこのことも話した。
「占いで出たらしくて」
「それでなのね」
「ええ、コンビニの前に来たら」
それでというのだ。
「私がいたみたいよ」
「そこでも占いなのね」
「何でもお店は109のビルの中にあるそうよ」
「そうそう、速水さんのお店はね」
「109にあるの」
「あのビルの中でね、そのことも有名だから」
「それじゃあ」
「間違いないわ」
まさにとだ、母は娘に言った。
「速水さんよ」
「そうなのね」
「すぐに連絡しなさい」
母は積極的に言った。
「速水さんにね」
「名刺に携帯やメールのアドレスもあるし」
「だからね」
「速水さんに連絡して」
「お母さんはいいって言ったってね、お父さんにもお話するから」
「お父さんはいいって言うかしら」
「普通アルバイトでわざわざお家に来て採用したいって言う人いないわよ」
母の言葉は真剣なものだった。
「そこまでする人が来るのなら」
「お父さんもなの」
「まずね」
「うんって言ってくれるのね」
「間違いないわ」
母の言葉は太鼓判を押したものだった、もっと言えば母は父が難色を示してもそれでも説得するつもりだった。
そうした考えでだ、咲に言った。
「だからね」
「速水さんになのね」
「連絡しなさい、すぐにでも」
「すぐになの」
「来て欲しいってね」
お家にというのだ。
「そうしてね」
「それじゃあね」
咲は早速だった、自分の携帯を出してだ。
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