第七十一話 エドゥアール王、最後の一日
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ミリアンの事を、トリステインの発展の為に若くして尽くしてくれた事に、文句のつけようも無い自慢の息子だと思っている。
だが、トリステインの発展の為には手段を選ばないその苛烈さが、いつの日か災いの種になるのではないかと心配していた。
「マクシミリアンはまだ若い。若さに任せて進み続ければ、何時か足元を掬われるかも知れない」
「お言葉ですが陛下、王太子殿下子飼いの家臣団は優秀な人材ばかりです。彼らが王太子殿下を支えてくれるでしょう」
「それは違うぞマザリーニ。たしかに彼らは優秀だが、マクシミリアンが本気で強く押せば、結局はイエスマンとなってしまうだろう。命を賭して諌言する様な者はいない」
「……」
「私は、マクシミリアンとカトレアの夫婦喧嘩の事を耳にしたのだが、何でもカトレアは一切休まずにトリステイン発展の為に仕事を続けるマクシミリアンに『ガーゴイルの様だ』と言ったそうだ。私はハッとしたよ、滅私奉公もここまで行けば異常だ。あの子には遊ばせる時間が必要だった……」
エドゥアール王は目を瞑った。
『全速力で走り続けた結果、全身が擦り切れて命数を使い切ってしまうのでは?』
と不安に駆られた。
「む、すまないな引き止めるような事を喋ってしまった」
正気に返ったエドゥアール王は、ジッと待ち続けるマザリーニに謝った。
「いえ……私はこれで失礼いたします」
「そうか……トリステインを発つのはいつ頃か?」
「一週間後を予定しております」
「分かった。マザリーニの未来に幸多からん事を願っている」
「ありがとうございます」
そう言ってマザリーニは頭を下げ、執務室を出て行った。
椅子に深く腰掛けたエドゥアール王は、ため息を吐いて天井を見上げると、再び書類に目をやった。
書類には、新世界からの品々が各国で付加価値を与え、トリステイン王国はかつて無いほどの黒字を出したことが書かれていた。
新世界からもたらされた物は、大流行しているショコラを始め、バニラといった香料や、タバコなどの嗜好品。唐辛子などの香辛料など等、数えだしたらキリが無い。
マクシミリアンは、それら新しい品々のハルゲギニアへの供給を抑える事で付加価値を与えて値を釣り上げ、巨万の富をトリステインにもたらす事に成功した。
だが、エドゥアール王の機嫌は良くない。
「ううむ。上手く行き過ぎている」
慎重なエドゥアール王は、この結果に眉をひそめた。
マクシミリアンの手腕には口を挟む余地は無いが、ここ最近、成功の裏で『成金』と呼ばれる者達がかつてのトリステイン貴族の様に、市民に対し無体を行うようになり、エドゥアール王の治世に一抹の不安を与えるようになった。
「学の無い成金が、各地
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