第五章
[8]前話
「罪は罪、ですから」
「それは償うか」
「そうします」
こう住職に答えた。
「これより。ですから出家し」
「以後は僧として過ごすか」
「その様にします」
「それはこの寺で行うか」
「いえ、育ち親しんできたこの寺では甘えましょう」
源八は住職に確かな声で答えた。
「ですから」
「別の寺にか」
「入りまして」
そしてというのだ。
「そこで、です」
「修行を積んでか」
「罪を償います」
その様にするというのだ。
「その様にします」
「そうか、ならな」
住職は源八の話をここまで聞いたうえで彼に答えた。
「そなたの好きな様にせよ」
「そうしてよいですか」
「うむ、そしてな」
「罪を償って」
「そうして生きよ」
「わかりました」
源八は住職に頭を垂れて答えた、そうしてだった。
彼はある寺に入りそこで修業を積み後に徳の高い僧となった、それは後の話であるが彼が去ったのを見送り。
住職は僧と飴屋に達観した顔で言った。
「これも運命か」
「ですね、数奇なものですが」
「それもですな」
「母が殺されつつも生まれ霊となった母と観音様に育てられ」
「長じて観音様のお導きで仇を討つ」
「そして罪を償う為に再び寺に入るとは」
「それも運命か、なれば」
住職はその顔のまま言った。
「この話残すか」
「それがいいですね」
「後の世の人に伝えましょうぞ」
「そしてそれを教えにしてもらうとしよう」
住職はこう言ってこの話の詳細を書き残した、そしてその石も残した。
石は今も小夜の中山久延寺に残っている、この話も。遠江今の静岡県に伝わる非常に不思議な話である。
夜泣き石 完
2020・11・16
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