第三章
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「だからな」
「それがしは、ですか」
「見ておれ、馬もわしが曳く」
「それがしがそうしますが」
「いい、わしは馬が好きだからな」
それでというのだ。
「曳きたいから曳くのじゃ」
「左様ですか」
「ではな」
「このままですか」
「馬を曳いて歩いていくぞ」
こう言ってだった、源四郎は実際に馬を曳いて領内を歩いていった。供の者はその彼の後ろについていっていた。
三日程そうしているとだった、不意に。
前から玉虫色の毛をした小さな馬に乗った紅の着物を着た顔立ちも髪の毛も整った女が来た。その馬と女を見てだった。
源四郎は供の者に言った。
「わしはあの様な馬を見たことがない」
「何という毛の色か」
供の者も馬の玉虫色の毛を見て言った。
「あの毛は」
「うむ、あれはな」
「まさにですな」
「普通の馬ではない」
「あやかしの馬ですな」
「そしてじゃ」
源四郎は供の者にさらに話した。
「あの女一見美しいが」
「その様な馬に乗っておるなぞ」
「並の女ではない」
「左様ですな」
「あの女もあやかしじゃ」
「やはりそうですな」
「ではこれよりじゃ」
源四郎はその目を鋭くさせて身構えつつ馬と女に向かった、馬を曳いたままだがそれでもそうしていた。
そして馬と女があと数歩のところに来た時にだった。
無言ですっと前に出て刀を抜いた、そうしてまずは馬の首を切り落とし。
跳んで女を唐竹割りにした、するとだった。
馬も女も黒い煙となって消え去った、それを見てだった。源四郎はことの次第を見守っていた供の者に告げた。
「これでじゃ」
「あやかしは退治しましたな」
「うむ、無事にな」
「やはりあやかしでしたな」
「どう見てもおかしいであろう」
「玉虫色の毛の馬なぞ」
「しかも乗っておるのが紅の着物の女じゃ」
このこともというのだ。
「妖しいわ」
「そうでしたな」
「わしはあやかしの姿は知らなかったがな」
それでもというのだ。
「あの様にじゃ」
「如何にも妖しい者が来ることをですか」
「待っておった、馬を殺すなら馬のおるところに来る」
「ですな、それは」
「しかも名馬なら目立つ」
よい馬ならというのだ。
「だから必ずじゃ」
「あやかしもですか」
「来ると思っておった」
「それで、ですか」
「馬を曳いて領内を歩いておったのじゃ」
「そうでしたか」
「そしてじゃ」
源四郎はさらに言った。
「こうしてな」
「この度はですな」
「無事にあやかしを退治出来た」
「それはよいことですな」
「敵の居場所がわからぬのなら誘い出してじゃ」
「そこを攻めるのですな」
「今の様にな、戦でもそうするし」
それにというのだった。
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