出会いと再会は一方通行
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って自分の状態を理解する。
「ああ、気付きませんでした。すみません」
「いや……」
女性の言葉にヴォルフが肩を竦めながら答えと、そこへ何かが転がってくるような音と共に近付いてきた。
「カンナさん、ソラさん無事でしたかニャー!?」
音と共に現れたのは樽に乗ったアイルーだった。ヴォルフをここまで案内する役目を受けていたあのアイルーだ。
「あ、トラちゃん! そっか、トラちゃんがヴォル君呼んでくれたんだ」
「にゃあ。でもあっしも参戦する予定でだったんですがにゃあ……新顔さん。速いですニャ。あっし、樽の速さには自信あったんですニャア……」
トラと呼ばれたアイルーが樽をそのままの勢いのままで立ち上がらせる。一旦ジャンプして乗り直すことで完全に止めてしまう辺り器用だ。
その口調は速さで自分が負けてしまった事で落ち込んでいるのか溜息交じりだったが、蓋を開けて応急薬や弾丸を取り出していく。
「え? ヴォル君トラちゃんより速かったんですかぁ?」
「そうニャンでやんすよ。この辺りに入った途端、血と火薬の匂いがするとか言って一人でさっさと行っちゃいましてね。ところでコフユさんはどうしたのかにゃあ?」
トラの言葉にヴォルフは眉根を寄せ、ソラとカンナと呼ばれた二人が目を見開いた。
「そうだ! 小冬!」
少女が慌てて地面に置いてあった剣と盾を拾い上げる。
「あんた達、三人だったのか?」
その様子に
「はい。小冬ちゃんって言って私達姉妹の末っ子なんですが……」
「さっき一人でドスジャギィを追っかけて行っちゃって!」
それでこの二人は戦力不足で窮地に陥っていたのだ。
「どっちに向かった?」
「あっち! 川の上流の方! 急がないと!」
「トラ、二人の傷の手当と弾薬や道具を補充しておけ」
ヴォルフは少女が指差した方向へ向かいつつ、トラに有無を言わさない口調で命じた。
「は、はいニャ!」
「え? ヴォルちゃん?」
「先に行くぞ……終ったらついて来い」
ヴォルフは言い終わると共に駆け出した。その速さは凄まじく、山中に転がる石や倒木による段差など存在しないかのように走っていった。
「え? もう見えなくなっちゃった……」
「速いですねえ……」
「あんな調子であっしを追い抜いていったんですニャ。とにかく、さっさと澄ましょうニャ」
トラがヴォルフが走っていった方向を呆然と見ている二人を促す。
「あ、うん」
「速く追いつかないと行けませんしねぇ」
二人はそう言いつつ、トラの用意した道具で剣の応急手当、予備弾薬の装備をしていく。トラはそれを手伝いつつ周囲を見渡す。周りにはジャギィの死体が死屍累々と転がっていた。
幾つかは彼女達の手による物だが、殆どがあの男の刃による傷が死因だ。全てが一太刀で始末されている。
これ
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