第二章
[8]前話
「十キロ以上離れたお家にもね」
「行ってか」
「それでわざわざよ」
「靴を集めていたんだな」
「そうだったのよ」
妻は夫に家の中でジョーダンを見つつ話した。
「それで今片っ端から返してるわね」
「フェイスブックにも情報集まっているしな」
「取られた人も何でなくなったのかね」
「わからないんだな」
「まさか猫に取られていたなんてね」
自分の靴がというのだ。
「思っていなくて」
「驚いているんだな」
「ええ、それでね」
妻は話を続けた。
「順調にね」
「今は返していけてるな」
「そうなってるわ、あともうジョーダンは」
彼を見てこうも言った。
「そろそろ靴に飽きてきたみたいよ」
「また別のものを集めだしてるんだな」
「今度はまたゴミよ」
これの収集に熱中しだしているというのだ。
「これがね」
「そうか、またか」
「またよ、けれど人の靴取って来るよりましでしょ」
「ああ、じゃあこのことはか」
「終わりそうよ」
「それは何よりだな、しかしな」
夫は妻の話をここまで聞いてぼやく様に言った。
「猫も色々だな」
「それぞれ性格があるわね」
「ものを集めたがる猫もいるんだな」
「ジョーダンみたいにね」
「そうだな、全く今度は驚いたし参った」
夫は今度はやれやれといった顔になって述べた。
「人の靴を集めたがるなんてな」
「猫がね」
「こんなこともあるんだな」
「ええ、けれど靴を返してね」
「それでジョーダンも靴から他のものに興味が移ってな」
「よかったわ、全くあんたも変な子ね」
ロスはジョーダンにも言った。
「靴を集めるなんて」
「二度と興味を持つなよ」
プラシドもジョーダンに言った。
「ゴミはまだいいがな」
「もう靴は駄目よ」
「ニャア」
「わかったって返事か?」
「どうかしらね」
自分に言う二人に顔を向けて鳴いた彼にこうも話した、だがもうジョーダンは靴を集めることはしなかった。彼の収集癖はそのままだったが少なくとも靴はなくなった。夫婦はそれならいいと思ったのだった。
靴好きの猫 完
2021・5・27
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