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水が欲しくて
第二章

[8]前話
「チチッ」
「栗鼠か」
「そうね」 
 二人は目の前に出て来たダークブラウンの小さな栗鼠を見て言った。
「また急に出て来たわね」
「そうだな」
「何かね」 
 恋人はその栗鼠を見て言った。
 見れば栗鼠は二人を見上げている、その目はしきにり何かを求めている様だった。その目を見て言うのだった。
「何かを欲しいのね」
「欲しいって何がだ?栗鼠の食べものになりそうなのは今は持っていない」
「そうよね」
「栗鼠の口になりそうなものは」 
 恋人は考える顔で述べた。
「お水?」
「ペットボトルの中のか」
「それ位よね」
「それか?じゃあな」
「ペットボトルのお水をあげる?」
「そうするか」
 こう話してだった。
 キャンプスはペットボトルを出してだった。
 栗鼠に差し出してだ、こう言った。
「飲むか?」
「チチッ」 
 栗鼠は鳴いて応えてだった。 
 ペットボトルに顔を近寄せて水を飲みはじめた。
 ペットボトルの水は結構な量だった、しかし栗鼠は小さな体で水を飲み続け。
 中にある水を全て飲んだ、そうしてからだった。
「チチッ」
「有り難うか」
「そう言ってるのかしら」
 二人は栗鼠がここで鳴いたのを見て思った、そして。
 栗鼠が帰るのを見送った、それから旅を再開した。
 二人はそれぞれ話した、その話が終わってからデニスはエールを飲みつつそのうえでキャンプスに言った。
「同じだな」
「そうだな、お互い面白い経験したな」
「旅に出て喉が渇いた生きものに水やるなんてな」
「猫と栗鼠で違ってもな」
「お互い面白い経験したな」
「全くだ、これも何かの縁だな」 
 キャンプスはデニスに笑顔で述べた。
「そうに違いないな」
「そうだな、じゃあその縁に乾杯してな」
「まだ飲むかい?」
「エールもう一杯飲むかい?」
「一杯どころじゃない、気が済むまでな」
 デニスは笑顔で応えた。
「飲むぜ。つまみにソーセージもな」
「頼むか」
「ああ、その縁に乾杯してな」
「じゃあどっちも出すな」
 キャンプスも応えた、そうしてだった。
 デニスは笑ってエールを飲みソーセージを食べた、キャンプスはその彼とさらに話した、そのうえでメールアドレスやお互いのSNSも確認してだった。
 友人となった、二人はそのうえで旅の話もしていった。この時からそれをはじめたのだった。


水が欲しくて   完


                  2021・5・25
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