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『外伝:青』崩壊した世界に来たけど僕はここでもお栄ちゃんにいじめられる
マスター様とお兄様の間で揺れる海月の話
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ふふっ、中途半端で何も出来ないゴッホにはお似合いですよね…!絵が描けたところでゴッホに何ができるんだって話ですよ!生前なんてロクに売れなかったただの穀潰しだったんですから!!えへ…えへへへへ…!」

自分をとことん自虐して、自分は何も出来ない、役立たずなんだと責める。

そうだ。
彼女は…似ている。

「面白く…ないよ。」
「えへへへ…え?」
「面白くもなんともない。ゴッホちゃんだってそうでしょ?自分で自分をバカにして、悲しくなったり、辛くなったりしないの?」

彼女の手を取る。
その手はひどく震えていて…それに

「傷だらけだ…。」

なにかの傷跡、それに火傷の跡だってある。
これが…霊基の異常?
召喚された時点で…こうだったのだろうか。

「あの…お兄様。」
「ちょっと待ってて。」

昔ほどとはいかないけど、
出来るかもしれない。

「大丈夫。任せて。」

持っていたペンに魔力を流し込むと先が淡く光る。
魔力の放出と同時に舞うそよ風が頬をくすぐっていった。

「…ここだ。」

ゴッホちゃんの手にペンを付け、霊基をなぞる。
昔のように直結はしていないけど黄衣の王から少しずつ魔力は流れてくる。
ペン先に魔力を乗せ、少しずつ丁寧に、かつ慎重に彼女の霊基を復元していく。
そうして彼女の手を”描く”こと5分…。

「出来た…!」
「…。」

描き終えた手の表と裏を見て、不思議そうにしているゴッホちゃん。

「お兄様…これは…?」
「描いてみて。」

聞くよりも試してもらった方が話は早い。
そう思い、僕はゴッホちゃんにペンとスケッチブックを渡してみせた。

「で、ですがゴッホは…!」
「いいから描いて。僕が題材になるから。」

ひまわり畑を背にして立つ僕。
言われるがまま、彼女は恐る恐るスケッチブックに絵を描いていく。
まずペンを走らせた時、何かに気付き「あっ」と声を上げた。

「…描ける。描けます…!」
「でしょ?」

生前のように、今までのように、ゴッホはかつての絵が描けることに驚きを隠せないでいた。
やがてその表情は驚愕から喜びへと変わり、ペンのスピードもどんどん早くなる。

「すごい!すごいですお兄様…!これは一体…!?」
「僕の持つ技でね。霊基描換って言うんだ。文字通り描いて換えるってこと。今のはそれの応用で、異常のあったゴッホちゃんの霊基を修復したんだ!」
「霊基…描換…。霊基、書換……。」

僕の持つ技でゴッホちゃんの手は完全に復活した。
どうして召喚された時点で霊基に異常があったのか、気になることはあるけどそれ以上は聞かないことにした。
それと、さっき霊基を見て気付いたこともある。

「…。」
「お兄様…?」

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