第二章
[8]前話
すぐに岸辺に上がった、そうして自分を心配そうに見ているカナーラに微笑んで話した。
「大丈夫だよ、僕は溺れていないよ」
「パオン」
「心配してくれて有り難う」
カナーラを撫でて優しい声もかけた、そうしてだった。
身体を拭いて着替えてからだ、彼は同僚達に話した。
「象は優しいですからね」
「ええ、そうですよね」
「カナーラに限らず」
「とても仲間思いですからね」
「はい、インドでもです」
この国でもというのだ。
「井戸に落ちた赤ちゃんを助けたら井戸の傍の川の向こうから大勢の象が赤ちゃんを助ける為に井戸の方に来たって言いますし」
「カナーラもですね」
「自分を大切にしてくれるダリックさんの為に」
「動いてくれましたね」
「そうですね、有り難いです」
ダリックは心からこう思った。
「カナーラそして象の優しさが」
「全くですね」
「ではこれからもですね」
「ここにいる象を大事にしていきますね」
「是非、その為にここにいますし」
それでというのだ。
「これからも」
「そうしていきましょう」
「皆で」
「象の優しさに応えましょう」
同僚達も応えた、そうしてだった。
彼等は象の世話と保護をしていった、勿論その中にはカナーラもいた。カナーラはダリックを見るといつも嬉しそうな態度を見せた。自分を助けてくれて大事にしてくれているその彼を見る度に。
象の優しさ 完
2021・5・23
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