第二章
[8]前話
「最低な、人間以下の外道もな」
「そういうことですね」
「元飼い主は飼育放棄は虐待だからな」
「それで、ですか」
「その罪で猛獣の飼育権を永久剥奪された」
「自業自得ですね」
「外道はいるが絶対に報いを受けるんだ」
そうなるというのだ。
「そうしたものだ」
「それでも酷いことが起こったことは事実で」
「ああ、悪人が裁かれたらな」
「被害者を助けることですね」
「その為に来てもらうぞ」
カーン、その雄ライオンにというのだ。こう言ってだった。
シェーラ、塞ぎ込み絶望の沼の中に沈んだままの彼女のところにだった。
雄ライオンのカーンが来た、カーンは彼女の傍にずっといて彼女に優しい目を向けてそうしてだった。
見守っていた、そして身体を寄せて温もりも与えた。するとだった。
シェーラは身体の温もりから心のそれも感じてだ、次第に心を開き。
ご飯を食べる様になり動く様になり。
シェーラはいつもカーンと一緒にいて彼と共に動きご飯をよく食べる様になり。
「ガウ」
「ガウガウ」
カーンに応えて鳴く様になった、その彼女を見てだった。
女性スタッフは男性スタッフに笑顔で話した。
「よかったですね」
「同じ苦しみを知っているからな」
「カーンはシェーラのことを理解して」
「そしてな」
「優しく出来るんですね」
「そうだ、本当の王者はな」
ライオンが百獣の王と言われている言葉から述べた。
「相手の痛みがわかって労われる」
「それがですね」
「真の王者だ、だからな」
「カーンはですね」
「本当の意味でな」
まさにそれでというのだ。
「百獣の王だ」
「そうですね、じゃあこれからも」
「カーンはずっとシェーラの傍にいてな」
「彼女を支えてくれますね」
「そうしてくれる、真の王者はな」
女性スタッフにあらためて話した。
「カーンのことを言うんだ」
「そうですね」
「苦しみを乗り越えて他の誰かの苦しみを理解して救える」
「カーンは本当に王者ですね」
「真の百獣の王だ」
カーンを見て言うのだった、見れば彼は今もシェーラの傍にいる。傍にいてもらっているシェーラの顔は明るかった。もうそこに苦しみも絶望もなかった。
真の百獣の王 完
2021・5・23
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ