暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
G編
第81話:それぞれの帰還
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に、見慣れた掌型の装飾があるのが見えたのだ。
 それが意味するところは、一つしかない。

「お前……魔法使いか?」

 颯人の呟きに奏達は盛大に身構えた。彼女達が敵の魔法使いと聞いて真っ先に思い浮かべるのは、敵組織であるジェネシスの魔法使い。しかも1人で来たと言う事は幹部の可能性がある。警戒するのも無理はない。

 だが切歌達にとって最も身近な魔法使いは1人しか存在しなかった。

「もしかして……」
「ソーサラー、デス?」

 切歌と調の声に応えず、ソーサラーと思しき男性は颯人と睨み合う。と言ってもソーサラーらしき男性はキャップを目深に被っている為目線自体は合っていないのだが。

 場に似つかわしくない緊張感のある膠着。それを破ったのは他ならぬ颯人であった。

「…………はぁ」

 颯人は溜め息を一つ吐くと、徐に3人に向け手をシッシと払った。言葉は無かったが、さっさと行けと言っているのが分かり切歌と調は怪訝な顔になる。

「……どう言う事?」
「お前らと考えは同じってだけだよ」

 ここで戦えば周りに無用な被害が及ぶ。しかも、シンフォギアだけでなく魔法使い迄加わればそれはさらに広がる。折角新しくなった校舎もただでは済まないだろう。

 そんな戦いをするつもりは颯人にも毛頭なかった。故にこの場は見逃すのだ。

 颯人の気持ちを理解したからか、ソーサラーらしき男はキャップのつばを抑え軽く会釈すると2人の少女の手を取りその場を立ち去っていく。切歌と調は、ソーサラーに半ば引っ張られるようにその場を立ち去っていく。

 颯人はそれを黙って見送った。

 3人の姿が見えなくなると、それまで黙っていた奏が口を開いた。

「良かったのか、行かせて?」
「仕方ないだろ? あの子達の言う通り、ここでドンパチする訳にもいかないんだし」
「でも、このまま黙って見逃すのも……」
「お、追い掛けますか?」
「無駄無駄。多分少し人気の無いところに言ったら魔法で転移されるよ」

まぁ分かってはいた。颯人と奏のやり取りから、魔法使いの逃げ足の速さはこの場の全員が熟知している。特にテレポートの様な転移系の魔法を持っている様な場合、追跡は絶望的だ。
 以前ソーサラーが魔法で転移したのを見ているので、颯人は3人の追跡を早々に諦めていた。

 こうなると彼女達に出来る事は、彼女達の誘いに乗り決闘の合図を待つ事だけであるが――――

 その時、彼らの端末に通信が入った。

『皆、揃っているか? ノイズの出現パターンを検知した。程無くして反応は消失したが、念の為に周辺の調査を行う』

 弦十郎からの通信に各々返答しようとしたその時、通信機の向こうで弦十郎が驚いたような声を上げた。

『うぉっ!?』

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