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『外伝:青』崩壊した世界に来たけど僕はここでもお栄ちゃんにいじめられる
継ぎ接ぎの絵描きと兄妹になる話
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ケッチブックを開く。
真っ白な世界。この画用紙は今から僕が思うがままに描ける世界だ。
今から僕はここに、僕だけのものを自由に描ける。
だから、絵を描くのは楽しい。
楽しいから描く、描きたいから描く。
お栄ちゃんと同じように、僕もまた好きなだけ好きなように描きたいんだ。

「…。」
「?」

と、まずは鉛筆でさらさらと下書きをしていくわけだけど、その様子をゴッホちゃんは横から覗き込むようにしてずっと見ていた。

「ゴッホちゃん?」
「…あ、はい!?」
「描かないの?」
「あ、あぁいえ…舞様のペンさばきに見とれてしまっていたといいますか…と、とてもお上手ですね!!」

と、世界的に有名な画家さんに褒められちゃった。

「実は僕、お栄ちゃんにもうまいって褒められたんだ。」
「お栄ちゃん…ホクサイ!?ホクサイに!?そうでした!舞様はホクサイのマスターなんでしたっけ!!」

と、お栄ちゃんの名前を聞くと大興奮のゴッホ。

「うん。それととと様からも褒められてね。まさにお墨付きってやつ。タコだけに。」
「そ、それは…。」
「ゴッホジョーク。なんちゃって。」
「ふふ…えへへ…。」

自然と、彼女の口から笑顔が漏れた。
なんだかそれがとても嬉しくて、それと同時に…なんだろう。守らなきゃなとも思えた。
にしてもこの感覚はどういうことなんだろう。
ゴッホちゃんとは初対面。なのに彼女とはずっと前から会っているような、知り合いのような、
いや、もっと親しい間柄のような親近感を感じる。
まるで…

「舞様は…暖かいですね。そよ風みたいな優しさと穏やかさがあって、いつも笑ってて、そばに居ると安心します。まるで…ゴッホに居るはずのない”お兄様”が出来たみたいで…。」

まるで、妹。
ゴッホちゃんからは何かきょうだいのようなものをかんじとれたんだ。
僕は弟だったから分からない。けど…
妹がいる人って言うのは、こういう感覚なんだろうか。

「お兄…様。」
「ハッ!?すっ、すすすすすいません!!!ゴッホなんかが舞様のご兄妹だなんて…!し、失礼にも程がありすぎますよね!!すいません!!!身の程を知らなさ過ぎました!!どうかお許しを!!!!」
「え、ちょ、ちょっと待ってよゴッホちゃん!」

あわあわおろおろし、青ざめた表情で土下座を決め込もうとするゴッホちゃんを止める。

「申し訳ありません申し訳ありません!!今すぐ死にます!あ、拳銃とかあります?ここは謝罪の意を込めて舞様にゴッホの眉間目掛けて1発ドカンと!!いえ!失礼しました!!やはり舞様の手をわずらわせるわけにはいかないですね!!やはり自分の手で…」
「ゴッホちゃん!!!!」

情緒不安定。
そういった言葉が、今の彼女に当てはまるだろう。
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