四十八 葬儀のあとで、
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過去ではなく、未来を見据えていた。
アスマの死から現実から逃避せず、死を受け止めた上で先を見通していた。
悲しみ・怖れ・憤りも何もかも腹の中のもの全部、吐き出すよりも、それら全てひっくるめて、覚悟を決めた男の眼だ。
そうなるように導いた太陽のような子を思い浮かべ、シカクは口許を軽く緩ませる。
(ナルちゃんか…)
シカマルが幼い頃からずっと、気にかけている女の子。
里人から忌み嫌われ、敬遠され、辛い過去を生きてきたにもかかわらず、太陽のように明るい子をシカクも気に入っていた。
夜の帳が下りて、星が瞬く夜空。
庭から聞こえてくる虫の音に耳を澄ませながら、シカクはガシガシと頭を掻く。
父の助言なく立ち直っている息子に、なんとなく寂しいものを感じた。
「…まったく。誰に似たんだか」
間違いなく自分だとわかっていながら、シカクはそうぼやかずにはいられなかった。
翌朝。
洗面所へ足を運んだシカクは、遅れて顔を洗いに来た息子とすれ違った。
通り過ぎ様に、昨日声を掛けなかった代わりに揶揄してやる。
「惚れた相手の前ではカッコつけちまうよなぁ」
「ごふ…っ」
うがいをしようとしていた矢先の父の言葉に、思いっきり咽る。
ごほげほ、と咳き込むシカマルの背中になんとなく安堵して、シカクは呵々と笑った。
急に遠い存在に思えて寂しいものを感じていたが、色恋沙汰になると急に子どもに戻る息子に安心する。
げほごほ、と咳き込みながら恨めしげに睨んでくるシカマルの視線を背中に感じながら、シカクは飄々と洗面所を出て行った。
息子の部屋をひょいっと覗く。
散らばった将棋の駒や乱雑に置かれていながらも筋道の通っている盤を視界の端に捉え、シカクは眼を細めた。
今から息子が何をしようとしているのか、知っていた。
知ってはいたが、シカクは止めようとは思わなかった。
息子のやりたいようにやらせてやろうと、見なかったふりをして、シカマルの部屋を後にする。
「…骨は拾ってやるさ」
本音は止めたくとも、それを押し殺すその表情は、覚悟を決めた父親の顔だった。
「…少しは、休憩なさったら如何ですか」
「ああ、お前か」
尋問され、軽く遠のく意識の片隅で、話し声がする。
うっすらと眼を開けると、霞む視界の向こうで、寸前まで自分を尋問していた大柄な男に話しかける細身の忍びの姿があった。
「私が見ておきますから」
「しかし…」
渋る
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