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渦巻く滄海 紅き空 【下】
四十八 葬儀のあとで、
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うな笑顔を目の当たりにした瞬間、シカマルの視界が色鮮やかになる。


寸前までモノクロだった沈んだ里。白黒だった道行く人達。晴れているのに灰色の空。
それらが、ナルを中心にして一気に色を取り戻してゆく。





真っ青な空の下、シカマルの太陽が笑う。
特に色鮮やかなその笑顔が、シカマルの落ち込んだ心に火を灯した。










アスマが死んだ。
どうしようもなかった、と人は言う。
お前達が生きていただけで僥倖だ、と里長は言う。

突如割り込んできた桃地再不斬がいなければ、アスマだけではない。
イズモ・コテツ、そしてシカマルもまた、アスマに続いて命を落としていただろう。

そう言い切れるほどの強敵だった。
そう諦められるほどの強者だった。
けれど──。



諦めない。諦めるわけにはいかない。
諦めないど根性を持つ彼女の隣で、胸を張って共にいられる男でありたいから。






















「…シカマルは?」


夕食の席にも現れなかった息子の所在を、シカクは妻に問うた。


「それが…その。家に帰るなり部屋に籠もって…」

妻のヨシノの言葉に、シカクは「へぇ」と片眉を上げる。
息子の部屋へ向かえば、やけに静かだ。時折、パチンパチン、と聞き慣れた音がして、シカクは静かに障子を開けた。

「シカマル、入るぞ…」


軽く断りの言葉を入れて部屋へ足を踏み入れる。
けれど、シカクはそれ以上進むことも言葉でさえ先を続けられなかった。


息子はいる。
だが、彼はじっと将棋の盤を睨んでいた。


どこか鬼気迫る様子で、将棋を打つその横顔に気圧される。
自分が部屋に入ってきた事にすら気づけないほど、凄まじい集中力だった。

戦略を練っているのだろう。
将棋の駒を敵に見立てて、どう攻めるか。どう動くか。

何通りも何十通りも目まぐるしく思考を巡らしている様子がありありと理解できて、シカクは何も言わずに障子を閉めた。





「──なんだ。てっきり、しけた面してるかと思ったが、」


凄まじい集中力で盤に向かう息子を目の当たりにしたシカクは、障子を背に、軽く肩を竦めた。


「存外、悪くない顔つきじゃねぇか」





アスマの死に、腑抜けているのかと思った。我慢して溜め込んでいるのかと思った。
将棋に誘い、その溜め込んだモノを吐き出させようと思ったのだが…要らぬ世話だったらしい。


「俺の出る幕じゃなかったかね…」



シカマルが持ち直した原因に大体の当たりをつけながら、シカクは空を仰いだ。

先ほど見た息子の眼は
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