四十八 葬儀のあとで、
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い気配。
覚えのありすぎるその気配を感じて、シカマルは眼を眩しげに細めた。
さら、と以前よりずっと伸びた金の髪が頬をくすぐる。
それは、シカマルの晴れやかな青空だった。
シカマルを見下ろし、にしし、と笑った波風ナルの笑顔を見上げれば、沈んでいた気持ちも僅かに浮上する。我ながら現金な、と己自身に呆れながら、シカマルは身を起こした。
「此処だと思ったってばよ!」
シカマルの背中に、こつん、と軽く重みが乗る。
背中合わせで座り込んだナルのぬくもりを感じながら、かなわねぇなぁ、とシカマルは内心呟いた。
かつてアカデミーで一緒に騒いでいた頃、ナルとこうやって屋根の上で昼寝していたことがある。
それを覚えていたナルに、むずがゆいものを感じて、シカマルは苦笑を零した。
背中にあるぬくもり。それを心地よく思いながら、空を仰ぐ。
ナルが来たことで、白黒だった世界が微かに色づいた気がした。
「……………………………」
「……………………………」
蝉の声がする。里を駆けまわる子ども達の笑い声がする。
けれど身近の、背中越しに感じるぬくもりの主は一言も声を発しない。
暫し、無言で座っていたシカマルはとうとう口を開いた。
「……なんも聞かねえのか」
普段、やかましいくらいの幼馴染が無言で座り込んでいる。
そのことを訝しげに訊ねながら、シカマルはほとんど独り言のように呟いた。
「…なんで何も聞かねぇんだ」
彼女からの返事は期待していなかったが、ナルは軽く体を預けてきた。
「シカマルこそ、なんで我慢してるんだってばよ」
背中越しのその言葉に、ぎくりと身体が強張る。
そのあからさまな反応に気づいていながら、ナルは知らないふりをした。
「シカマルは昔っから溜め込むタイプだかんな〜」
あえて明るく笑う。それ以上、深く踏み入れないナルの声を、シカマルは背中で聞いていた。
いつも遠慮なく相手の領域に踏み込んでいながら、こういう時はどこか聡い幼馴染に、荒れていた心が穏やかになってゆくのを感じる。
しかしながら直後の彼女の言葉に、穏やかな心が波紋を帯びた。
「何かあれば、いつだってオレの肩でも膝でも胸でも貸してやるってばよ!」
どんとこい!!とばかりに、ナルが胸を大きく張るのが背中越しにも伝わってくる。
思いもよらぬ励ましに、シカマルは思わず突っ伏した。咳き込みそうになったのをぐっと耐える。
前半はともかく後半は色々とマズい。
純粋な厚意だからこそ、好意を持っている相手が誤解すること間違いなしの言葉を堂々と男らしく告げる彼女に、シカマルは頭を抱えた。
「…お前、それ、他の奴らには言うなよ」
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