四十八 葬儀のあとで、
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空は晴れていた。
鐘の音が厳かに鳴り響く中、行列を成す黒。喪服姿の人々は棺桶へ一同に頭を垂れる。
あちこちで上がる嗚咽は鐘音で掻き消される。空は晴れてはいたが、あいにくの曇り模様だ。
里を包む暗欝な空気は、空と同じく曇っている。
代表として棺桶へ供えた花束を、紅はじっと見つめる。
その花だけが白き輝きを以って咲き誇っていた。
嗚咽を漏らす木の葉丸の肩を撫でさすっていたナルは、隣から聞こえてきた囁き声に眼を瞬かせる。
「シカマルは?」
「もう出かけたっておばさん言ってたのに…」
いのとチョウジの小声のやり取りを聞き留め、ナルはシカマル不在の葬儀を眺める。
冥福を祈る木ノ葉の里は今や、黒白の世界へと成り代わっていた。
開く。火をつける。閉じる。
開く。火をつける。閉じる。
手持ち無沙汰に、ライターを開閉させながら、シカマルは空を仰いだ。
屋根の上で寝転がって、里を見る。
うるさいくらいに鳴く蝉の鳴き声に雑ざって、子ども達の笑い声が聞こえてきた。
前者は煩いだけだが、後者は微笑ましいものだ。
思わず口許を緩ませる。だがすぐにその顔は、微笑みを忘れたように沈んだ。
空はずっと曇っている。
だからだろうか。木ノ葉の里もずっと沈んでいる。
色を失ったかのような白黒の世界が、今のシカマルの瞳には映っていた。
アスマが死んだ。
どうしようもなかった、と人は言う。
お前達が生きていただけで僥倖だ、と里長は言う。
突如割り込んできた桃地再不斬がいなければ、アスマだけではない。
イズモ・コテツ、そしてシカマルもまた、アスマに続いて命を落としていただろう。
そう言い切れるほどの強敵だった。
そう諦められるほどの強者だった。
けれど──。
シカマルはライターを握りしめる。
もはや形見とも言えるソレは、先日までアスマが煙草を吸う時に使っていた物だ。煙草を吸わないシカマルにとっては無意味なモノ。
けれど意味はあった。
確かに、意味はあったのだ。
『暁』の飛段と角都。
その飛段の何らかの術で、アスマは死んだ。
不死身である奴に対抗すべき手段など現時点では思い浮かばない。だからこそ歯痒い。
だからこそ…──。
アスマが死んだあの時、あの瞬間。
何もできなかった自分自身がシカマルは悔しかった。
ぼんやり、と空を仰ぐ。
不意に、影が差した。
いきなり目の前に広がった明るい青に、空が突然晴れたのか、とシカマルは思った。
「やっぱり。此処にいたってばね」
ニシシ、と笑う声。傍にいるだけであたたかくなる、やかましいほどの明る
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