第二章
[8]前話
「タリーはどう見ても犬だけれど」
「産まれた時からずっと猫と一緒にいたから」
「それも何匹の子に囲まれてだから」
それでというのだ。
「猫みたいにね」
「暮らしているのね」
「そうよ、それでそれがタリーにとっては自然なの」
「そうなのね」
「だからこれからもね」
「タリーはローズ達となのね」
「一緒に暮らしていくのよ」
「それがタリーにとって一番幸せなのよ」
娘に笑顔で話した、そしてだった。
「だからね」
「これからもなのね」
「この子は猫達と一緒よ」
「じゃあ私達はそのタリーとローズ達と」
「一緒よ」
娘に話す顔は笑顔のままだった、だが。
父は会社から家に帰ってやれやれとなった。娘に受け継がれた太く濃い眉に茶色の太く硬い質の髪の毛に。
一九〇近い背だ、その彼がひっくり返った椅子を見て言った。
「またタリーか」
「ワン」
「ワンじゃないよ」
自分を見て親し気に鳴く彼にも言った。
「ひっくり返して」
「大きいからね、タリーは」
妻も言ってきた。
「だからね」
「猫みたいに動いたらな」
「すぐにこうなるのよね」
「だからうちはタリーが行きそうな場所にものを置けないよ」
「特に割れるものはね」
「全く、ローズ達だけでも大変なのに」
それがというのだ。
「タリーまでだから」
「というかタリーが一番ね」
「身体が大きくてやんちゃだから」
「猫みたいにね」
「困るよ、けれどそれがタリーだから」
尻尾を振っている彼を見て言った。
「仕方ないな」
「そうね」
「これで愛嬌あるし家族に愛情持ってくれてるし」
「それじゃあね」
「ああ、じゃあご飯あげるよ」
父はこう言ってだった。
タリーに夕食をあげようとすると。
するとだ、タリーは猫達と共に彼のところにやって来た。
「ワンワン」
「ニャンニャン」
「ニャウン」
「ミャオン」
「ニャンッ」
彼の足下に皆で身体を下茂に摺り寄せてそれからご飯を食べた、そんなタリーの姿は周りの猫達と変わらなかった、そんな彼を見てだった。
一家で猫達と共に撫でた、すると尻尾を振った。
「犬だけれどな」
「本当に猫みたいね」
「こんな子がいてもいいね」
そんなタリーを見て話した、彼を見る目は何処までも暖かかった。
猫みたいな犬 完
2021・5・20
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