第十三話 希望の親その七
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「ずっと。逃げてたんだね、僕は」
「逃げてたの?」
「頑張ることから逃げてたんだ」
こう言ってだ。目をやや伏せさせて言ったのだった。
「ずっとね」
「希望、逃げてたの」
「うん、逃げてたんだ」
こう言ってだ。そうしてだった。千春に今度言うことは。
「それで。お話がすぐに終わったから」
「うん、どうするの?」
「プール行く?」
日課になっているだ。そこに行こうかと言ってだ。また千春に顔を向けたのである。
「これから。どうする?」
「プール?けれど今日は」
「あっ、お休みだったね」
「そうだよ。定休日だよ」
「じゃあ仕方ないね」
千春に言われて苦笑いになってだ。希望は答えた。
「今日は泳ぐのは諦めようか」
「うん、残念だけれどね」
「じゃあどうしようか」
プールが休みならどうするか。希望は少し考えた。
しかしそれは少しだけの間でだ。こう千春に言うのだった。
「じゃあ図書館に行かない?」
「図書館に?」
「そう、図書館にね」
町の図書館ではない。八条図書館である。八条学園の中にある図書館で世界屈指の蔵書と設備を誇っている。八条学園の生徒の間で図書館といえばそこなのだ。
「そこに行かない?」
「そしてそこでよね」
「うん、勉強しよう」
微笑んでだ。こう千春に言ったのである。
「テスト前だしね」
「そうだね。じゃあ図書館で二人でね」
「勉強しよう」
こう話してだった。実際に二人でだ。彼等はその八条図書館に向かった。
階段の上にギリシアの神殿の様な円柱が並んでいる。その奥にだ。
重厚な樫の、宮殿の入り口を思わせる扉がある。建物は欧州のロマネスク建築を思わせる。
その宮殿の様な巨大な建物の前に来てだ。希望は千春に言った。
「じゃあここでね」
「今から二人で勉強しようね」
「どの科目なの?」
「数学かな」
また少し考えてからだ。希望は自分の左隣にいる千春に答えた。今は階段の下にいてだ。そこからその宮殿の様な図書館を見上げているのだ。
「それをしない?」
「数学ね」
「他の教科は全部覚えたんだ」
暗記系はだ。そうしたというのだ。
「英語もね。グラマーもリーダーも」
「それで数学はどうなの?」
「ちょっと応用問題が怪しくて」
それでだというのだ。
「それを何とかしたくてね」
「あっ、応用問題なんだ」
「それが怪しいから」
また言う希望だった。
「だからちょっとしっかりさせたくて」
「確か数学のテストって」
「応用問題への得点の割り当てが大きいからね」
だからこそだというのだ。
「しっかりさせておきたいんだ」
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