第一章
[2]次話
バスの中にいた犬
ロンドンでバスの運転手をしているポール=マック、くすんだ金髪でグレーがかった青い目の中年男性の彼はこの時。
バスの中にいる一匹のブルテリア、白と黒の模様特に左目のところが黒くなっているその雄犬を見てだった。
怪訝な顔になっていた、それでだ。
運転中ずっと気になっていた、その犬は。
「あの、何か」
「わかってますよ」
日本訛りの英語で言ってきたアジア系の若い女性に応えた。
「男の人二人がですね」
「はい、連れてきましたが」
「そのまま何処か行きましたね」
「男の人達は」
「捨て犬ですかね、ロンドンじゃ犬がバスに乗るのは普通ですが」
それでもというのだ。
「ああして置いてくこともです」
「あるんですか」
「全く、犬も命があるのに」
運転手は苦い顔で客に言った。
「酷いことしますよ」
「あの、捨て犬なら」
「ええ、フェイスブックとかツイッターで知らせます」
「私もそうします」
客はスマートフォンを出して言った。
「そうします」
「いえ、さっき停留していた時にしました」
ここでだ、運転手は客に笑って話した。
「ですから」
「それで、ですか」
「もう後はです」
「飼い主さんがいたら見付けてくれて」
「さっきの二人が飼い主だったら捨てられたってことですが」
それでもというのだ。
「ですが」
「それでもですか」
「それはそれで里親探せますから。それとです」
運転しつつバックミラーで犬を見た、見れば。
犬は座席の一つの上に座っている、だが大きめの身体を震えさせている。怯えているのは明らかだった。
それでだ、終点で降りた客に言った。
「あのことは任せて下さい」
「そうですか」
「絶対に助かりますよ」
優しい微笑みで言った、そして実際に。
運転手達が集まり休息する場所のあるターミナルに着くとバスを降りる時に犬に声をかけた。
「大丈夫だぞ、絶対に本物の飼い主さんか里親が見付かるからな」
「クゥ〜〜〜ン・・・・・・」
犬はまだ震えていた、だが。
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