第六十四話 阿波野君と先輩その十四
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「はらだちが過ぎて」
「それで自分を忘れたのね」
「そうだと思うわ。相手の人が何をしたのか知らないけれど」
「暴力は振るってないのは間違いないわ」
このことは私も効いています。
「告白してね」
「その先輩のお友達に」
「失恋してそこから先輩がりっぷくされたらしいの」
「そもそも直接関係ないわね」
「ええ、そのことはね」
「それでどうしてそこまでしたのかっていうと」
お母さんはさらに言いました。
「いじめたいって気持ちがあったのよ」
「えっ、先輩に」
「だってその先輩が直接されたことじゃないのよね」
「ええ、その人と先輩は同じクラスだったらしいけれど」
このことは私も聞いています。
「けれどね」
「それだけよね」
「それまで何の接点もなかったらしいわ」
「そんな人に何でそこまでりっぷくしたのか」
お母さんは首を傾げさせました。
「お母さんもわからないけれど」
「先輩が人をいじめるなんて」
「人間は自分より力関係が下でしかも大義名分があれば徹底的に残酷になれるのよ」
「告白を振った時に何かあって」
「それで告白した人の評判が落ちて、ただ」
「ただ？」
「告白の断り方も色々で」
こうも言うのでした。
「そっと断ってそれで終わりならいいわ」
「二人きりの告白で」
「けれどおおっぴらに騒ぎで振ったら」
「相手も傷付くわね」
「その辺りも気遣いよ」
人を傷付けない、これは最低限の気遣いだと思います。例え相手がどんな人でもそしてどんな場合でもです。
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