第十二話 笑顔の親戚その九
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「そうだったんだよ」
「そうなのね。希望の本当の親は」
「おばちゃん達だったんだ」
こう言うのだった。
「実はね。それでね」
「それで?」
「僕には親がいるんだ」
あの両親ではなくだ。二人の大叔母達がだというのだ。
「物凄く嬉しいよ」
「親がいるっていいことだよね」
「うん、本当にね」
「千春にもいるよ」
千春は顔をあげて正面を見てだ。希望に微笑んで述べた。
「ちゃんとね。いるよ」
「千春ちゃんにもいるんだ」
「山がね。千春のお母さんでね」
「山が?」
「雨がお父さんなんだよ」
そうだとだ。千春は希望に笑顔でこう話すのだった。
「千春のお父さんとお母さんはそうなんだよ」
「雨に山って」
地春のその話にだ。希望はだ。
まずは目をしばたかせてきょとんとなった。それが表情に完全に出ている。そうしてそのうえでだ、話がよくわからないままだ。千春に尋ねたのである。
「それってどういうことかな」
「言ったままだよ」
「雨に山が」
「そうだよ。千春のお父さんとお母さんだよ」
「そういえば千春ちゃんって」
次にだ。希望はこのことにも気付いたのだ。
「お屋敷に住んでるけれど」
「どうしたの?」
「いや、そのお屋敷にね」
千春はいる。そして彼女の『家族』もだ。しかしなのだった。
「ご両親は一緒には」
「いないよ。だってね」
「だってっていうと」
「お父さんとお母さんはそうした存在じゃないから」
「存在?」
「だから。雨と山なんだよ」
千春はまたこの二つを話に出す。にこりとした笑顔で。
「だったらね。一緒に住むことはないから」
「ううんと。雨と山だから」
希望は首を捻った。千春の言葉の意味がどうしてもわからずにだ。
それでだ。首を捻りながらまた千春に尋ねたのである。
「一緒に住むことはないって」
「おかしいかな」
「ええと」
今度はだ。希望はどう答えていいかわからなかった。
戸惑った顔でだ。こう言っただけであった。
「何ていうかね」
「とにかくね。千春にもお父さんとお母さんはいるよ」
「そうなんだ」
「誰にも親はいるけれど」
「それはだよね」
「育ててくれる人のことを言うんだよ」
生んだ、それだけで親ではないというのだ。千春もそうした考えだった。
「このことはよくわかってね」
「わかったよ。それじゃあね」
「今から。希望の親の人達のところに行こう」
「とてもいい人達だから」
このことは保障した希望だった。
「安心してね」
「うん、それでね」
「お話しよう」
こう話してだ。希望は千春と共に学校の玄
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