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ゾンビ株式〜パンデミックはおきましたが株式相場は上々です〜
ゾンビ株式
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その時、ガクン! 音がした。彼女は急な揺れで腰が抜け、手すりにつかまって尻もちを回避する。扉の防火窓の向こうは、夜の様に暗い、フロア間でエレベーターが止まってしまったのだ。
「ついてない……」
彼女は今日初めて喋ったなと自嘲する。古いビルなので、エレベーターが停まってしまうことがあると社長も言っていた。そういう時はしばらく待って、駄目そうなら黄色のインフォメーションコールを捺せと言っていた。結局二分ほど待った後で呼び出しボタンを押した。呼び出し音は存外に大きな音が鳴った。いたずら防止の為なのかもしれない。
呼び出しボタンは空振りだった。24時間監視中! と書いてあるのに、ひどい仕打ちだった。彼女は携帯電話で会社に電話をするが、なぜか誰も出なかった。助けてー!と大きな声を出すのも憚られて、彼女はひとまずエレベーターの隅でうずくまることにした。とにかく落ち着かなければいけない。パンプスの中がじっとりと濡れている。存外に自分が怖がっていることに気付いた。このまま自分はオリンピックの熱狂によって忘れ去られて、全種目が終わった後、ミイラになって発見されるのではないだろうか?
彼女は携帯の中から、自分を助けてくれそうな人がいないか探してみた。東京に出てきて三年経つが、東京に友達と呼べるような人はいなかった。かつての同窓は、皆地元の宮城で就職しているし、ろくに連絡も取っていない。東京に逃げてきた自分から「助けて」と連絡が来たら、彼らはどう思うだろうか?
彼女は意を決して110番に電話した。初めてスマホの「緊急呼び出し」を使った。できれば他人様の迷惑になるような方法は使いたくなかったが、最後の手段だ。オペレーターが出る。
「すいません! 今はご対応できかねます! 事態は現在把握中です!」ブツッ
氷川はスマホを耳から離すと、まじまじと画面を見た。切れている。
間違った場所に電話をしてしまったのかもしれないと思ったが、履歴を何度見返してもそれは110番。こんな短い電話番号で間違えるはずがないのだ。もう一度かけようとしたとき、携帯の電源が落ちた。
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