三者三様
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
試験開始から6時間後の16時。最初に巻物を見つけたのは日向カナであった。日向一族に伝わる白眼は透視能力を持ち、障害物があろうとも意味を成さない。更にほぼ360度を視る事ができ、500mにも及ぶ視野の広さを兼ね備えている。この試験は彼女が有利に進めやすい内容であった。
「くっ……まだ付いて来るのか」
カナは木々を強く蹴り、枝から枝へと素早く飛び移る。チャクラを足裏に込め、適切な量でコントロールすれば手を使わずに木を登る事は彼女にとっては造作もない。
しかし、カナの後ろを同じ道を辿ってレツが追って来ている。それも巻物がある場所までの最短ルートを避け、振り切ろうと色々やった上でだ。
カナが今行っているものは木登りの業と呼ばれ、チャクラコントロールの修行を兼ねているのだが、忍者学校では習う事の無かったものだ。彼女の場合は日向一族の分家の男に教わったもの。
レツもまた猿飛一族の人間。教わっていても不思議ではないが、彼の成績は実技は兎も角として座学は下から数えた方が早かったと記憶している。
「(落ちこぼれ1人引き離せないとは……??)」
地道な努力を怠ってきた怠け者。それがカナが下したハルマとレツへの評価だ。そんなレツが木登りの業を習得している事は俄かには信じがたいが、実際に彼は木々を移り飛び、自身の後ろにいる。
その事は彼女の自尊心を深く傷つけ、焦りを生み出す。
「認めるものか……努力をしないで遊んできた落ちこぼれに遅れをとるなどっ……!」
“いい？貴女は必ず立派な忍になりなさい。お父さんの代わりに貴女が贖罪を果たすのよ”
必ず忍になる理由が自分にはある。ここで躓いてはいられない。ましてや落ちこぼれに負けるなどあってはならない事だ。
「私は認めん??」
カナはチャクラを練り上げる量を増やし、更にスピードを上げる。小細工はやめ、カナは最短距離で巻物を回収することを決めた。立ちはだかるのなら倒して行くまでだ。
カナが拓けた場所に積み立てられた石をどかし、土を掘り進めている様をレツは木の上から見ていた。近くにハルマの気配はない。その事に気付き、ニヤつく口を抑えられなかった。
「これならオレが下忍になるかもな〜」
最大の敵はハルマだった。彼がいなければ、下忍になれる可能性はある。いや、スピードは自分の方が速い。カナから巻物を奪えば合格は決まったようなものだ。
「下忍になるのはオレだ……！ハルマじゃなくてオレがなるんだ」
そう言って、レツは巻物を回収したカナの元へと駆けて行く。戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。
いくつもの火柱が上がる。それを避け、カナがレツの懐に潜り込み、掌底を叩き込む。巻物を賭けて一進一退の攻防
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ﾍﾟｰｼﾞ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿ｻｲﾄ〜
利用規約/ﾌﾟﾗｲﾊﾞｼｰﾎﾟﾘｼｰ
利用ﾏﾆｭｱﾙ/ﾍﾙﾌﾟ/ｶﾞｲﾄﾞﾗｲﾝ
お問い合わせ
2024 肥前のﾎﾟﾁ
しおりを解除