第一章
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元の飼い主と今の飼い主
バンコクで屋台をしているサオワラク=チャンスーンは夫のラナリットに昼飯を食べている時に言われた。
「おい、犬が来たぞ」
「野良犬?」
恰幅のいい癖のある黒髪と黒い目の夫に応えた、彼女も同じ髪と目の色であるが痩せている。背は二人共同じ位だ。
「そうなの」
「ああ、ちょっと餌やっていいか」
「残りものならね」
それならとだ、妻は夫に素っ気なく答えた。
「別にね」
「そうか、それじゃあな」
「ええ、それでね」
妻は夫にさらに言った。
「その犬何処にいるの?」
「あそこだ」
「クゥ〜〜〜ン」
夫が指差した方には薄茶色と白の折れた耳の中型犬がいた、弱々しい顔でしかも随分と痩せている。鳴き声も弱々しい。その犬を見てだった。
妻は夫にこう言った。
「お腹空かせてるみたいだし」
「残りものでもな」
「あげましょう、捨てるだけだしね」
残りものはというのだ。
「あげましょう」
「それじゃあな」
夫は妻に応えて鶏肉をあげた、すると。
犬は肉を咥えるとその場で食べずに何処かに持って行った、この日から毎日犬は屋台に来る様になったが。
絶対に持って行った、夫はそれを見て妻に言った。
「気になるな」
「そうね、ちょっと後をつけてみましょう」
「そうするか、おいちょっと店の番頼むな」
夫は学校から帰ったばかりの息子にこう言ってだった。
そしてだ、身体の前が白後ろが茶色の長く癖のある毛の優しい目の大型の雄犬にも声をかけた。
「レオもな」
「ワン」
「それじゃあな」
「レオもすっかりうちの犬になったわね」
妻はその犬も見て言った。
「そうなったわね」
「そうだな、四年前にふと拾ってな」
「その時は皮膚病でボロボロでね」
「わし等にも怯えていたがな」
「今は違うわね」
「すっかり懐いてな、じゃあ店は任せて」
息子とそのレオにというのだ。
「犬の後ついていくか」
「そうしましょう」
夫婦で話して犬の後をついていった、すると犬は路地裏を進んでいき廃屋に入ってそうしてだった。
そこの裏庭の方に行くと。
「ワン」
「ワンワン」
「ワンッ」
三匹のどれも垂れ耳気味で薄茶色と白の毛だった、その子犬達が出て来て。
犬の周りに集まった、すると犬は。
子犬達に鶏肉を差し出した、そして彼等が尻尾を振って鶏肉を食べるのをじっと見ていた。それを見てだった。
夫婦はこう言った。
「子供達にご飯あげてたんだな」
「そうね、毎日ね」
「わし等から貰ったものをな」
「自分の食べる分よりもね」
「だったらな」
それならとだ、夫は妻に提案した。
「これからは四匹とも屋台の傍にいてもらうか」
「そうね、番犬も
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