第十一話 テスト勉強その九
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「何ともないよ」
「そうだよ。陰口なんてね」
「何でもないんだね」
このことがわかったのだ。希望は。
それでだ。泳ぎながら笑顔で、こう千春に言った。
「僕ずっと陰口を聞いてたんだ」
「前はそれで辛かったのね」
「うん、嫌で嫌で仕方なかったよ」
陰口を言われる、そのことがだというのだ。
「それで胃も痛くなったし」
「胃って」
「そう。痛くてね」
それでだというのだ。
「苦しかったよ」
「高校に入って特に」
「そう。それまでも言われてきたけれどね」
小学校でも中学校でもだ。そうだったというのだ。
「けれど。高校の時が特に」
「特になの」
「そう。皆が聞こえる様に悪口とか陰口を言ってきたんだよ」
「それいつもだったの?」
「いつもだったよ。言わなかったのは友井君だけだよ」
彼の心からの親友であるだ。真人だけだったというのだ。何も言わなかったのは。
「一人だけだったよ」
「若し。あの人がいなかったら」
「僕は駄目になっていたね」
そうなっていたというのだ。完全に。
「家でもそうだったから」
「お家でも」
「うん。ぎりぎりだったよ」
まさにそうだったとだ。その頃のことを思い出しつつ話すのだった。
「何もかもね」
「そうだったのね」
「けれど今はね」
「今は違うよね」
「違うよ」
笑顔での言葉であった。
「全くね」
「そうね。駄目にはなってないよね」
「むしろその逆だね」
「よくなってるのね」
「自分でもそう思うよ」
明るい笑顔のままでの言葉だった。
「はっきりとね。ただね」
「ただ?」
「そう思えるようになったのはね」
泳ぎながら千春、自分の横にいる彼女を見ての言葉だった。
「やっぱり千春ちゃんのお陰だよ」
「千春が一緒だから」
「一緒にいるだけじゃなくてね」
それだけではない。だからこそだった。
「色々なことが見えてきたから」
「色々なことが」
「そう、見えてきて勉強できたから」
それ故にだというのだ。
「こうしたことも思える様になったんだ」
「希望がいつも言ってることだよね」
「そうだね。本当にね」
「千春もそうだしね」
「千春ちゃんもなんだ」
「そうだよ。千春も希望と会って一緒にいる様になって」
その小さく細い身体に喜色を満たして。千春は言うのだった。
「沢山のことがわかったよ」
「そうなんだ」
「希望だけじゃないんだよ」
決してだ。彼だけが幸せになった訳ではないというのだ。
「千春もなんだよ」
「僕なんかと一緒にいて」
「なんかじゃないよ」
このことも否定す
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