苦労する運営
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も痛みすぎてるわ」
「そうなの? むしろ保存状態よさそうに思えたけど」
「海であろうと空気中であろうと、この素材なら、ここまでの状態にはならないわよ」
家屋を調べながら、リゲルは言った。
無人となった家の中は、確かに荒れていた。石でできた家具にはヒビがあり、屋根も多く穴が開いている。
道路も、とても良好とはいえない。あちらこちらに亀裂が入っており、中には亀裂どころか溝になっているところさえあった。
「ムー大陸、だったかしら? 聖杯戦争の監督役もどうしてこの場所に変更したのかしら?」
「……そうか……君は、知らないよね」
「あなたは知ってるの?」
リゲルはハルトに鋭い眼差しを向けた。
ハルトは頷く。
「バングレイってマスターがいてさ。あ、エンジェルってサーヴァントのマスターなんだけど。そいつが、このムー大陸を復活させた。モノクマがいたってことは、多分バングレイの言葉に賛同したんじゃないかな」
「不公平極まりないわね」
リゲルは吐き捨てる。
「監督役を呼んだ方がいいわね。コエムシ! 聞こえてるんでしょ!」
リゲルが声を張り上げた。
すると、『はいはい、聞こえてますよって』と、白い影が現れる。
頭部のみがアンバランスに感じるほど巨大なネズミ。大きな人形程度の大きさのそれは、どこからともなく飛来し、リゲルの前にやってきた。
『うっす。ガンナー。……お前、なんで敵のマスターといるんだよ?』
聖杯戦争の監督役の一人、コエムシ。ハルトにとっては敵とみなすべき存在だが、心なしかげっそりしている様子の彼を問い詰めるつもりはハルトにはなかった。
「先にこちらの質問に答えなさい。この状況、一人のマスターの主導なの?」
『……正確には、マスターとサーヴァントのペアな。困ったことにモノクマ先輩までノッテやがるし』
「さっきも聞いたわね、その名前。モノクマって誰なの?」
『あー……他の監督役だよ。会ったことなかったか?』
「ないわ。それよりどういうつもり? 聖杯戦争は、運営が参加者に肩入れしてもいいのかしら?」
『んなわけねえだろ! こっちだって困ってんだ。さっきも別の参加者に苦情入れられたばっかりなんだよ!』
「困ってる?」
『そうだよ! 疑うんだったら、松菜ハルトに他の監督役も呼ばせてみろ!』
「……? あなた、コエムシに選ばれたんじゃないの?」
「俺をマスターにしたのはキュゥべえだよ。キュゥべえ!」
ハルトがその名を呼ぶ。すると、頭上の屋根に、ぴょこんと小動物が飛び乗った。
『やあウィザード。君から呼ばれるなんて珍しいね』
「自分でもそう思う。やっぱりお前もムー大陸にいたんだな」
『モノクマに連れて来られたのは、君たちだけじゃないってことだね』
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