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這いずる女
這いずる女 前編
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うやら死者に呪われているわけではないのだ。

 祖母は誰からも好かれるおばあちゃんという訳ではなかった。年齢のせいか、それとも元々の気質か、たいへん疑り深い性格で、よく母と衝突していた。母が自分のお金を盗むと言うのだ。盗まれるようなお金はないと思うのだけど……。しかし、自分の肉親二人が金で口論するのを見ることは、あまり美味いおかずとは言えず、ぼくは家族で食事をするのが苦痛だった。
祖母はぼくを味方につけようと、自分の娘がどんなに卑しい母親かを僕に説いた。それを聞いた母親は猶更激怒して、祖母もそれにならった。こうして二人は家でほとんど口を聞かなくなり、ぼくは二人の人物と重ね合わせのようにルームシェアをしている気分を味わった。二人はぼくを介した必要事項のみのコミュニケーションをし、祖母はほとんど自分の部屋から出てこなかった。大学生になり、逃げるように都内の寮へ入った。その後の事は、母からの短い電報で知るだけだ。祖母の痴ほう症は進行し、老人ホームに入った。ハッキリ言って清々した。以上。ぼくが呪われるというのは、お門違いじゃないか?

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