第百一話 帝、劉備を信じるのことその十
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「そうなったらな」
「そうよ。それで可能性もあるから」
「気をつけるべきだな」
「ああ。だからな」
それでだ。また言う丈だった。
「今のうちにあの連中どうにかするか?」
「どうにかって?」
「何か考えあるの?」
「今すぐにあいつの屋敷に殴り込んでな」
右手を拳にしてだ。テリーとアンディに話すのだった。
「それで叩きのめしたらいいだろ」
「いや、それは駄目でしょ」
舞がだ。丈のその考えに呆れて言った。
「証拠もないのにいきなりは」
「駄目か」
「絶対に駄目よ」
また答える舞だった。
「全く。丈さんはいつもそうなんだから」
「うだうだ考えるのは苦手なんだよ」
丈は全く反省しないまま言う。
「だからいつも突撃なんだよ」
「突撃はスラッシュキックだけにしておけよ」
「少なくとも司馬尉の屋敷に行っても何にもならないからね」
「あっ、そうなのか?」
テリーとアンディ、とりわけアンディの言葉にだ。丈は応えたのだった。
「じゃあどうすればいいんだよ」
「いや、どうするかってな」
テリーは呆れた声で丈に返す。
「今は待つしかないだろ」
「松しかないのかよ」
「そうだよ。あいつはおかしなことをしてるって証拠もないからな」
「だから証拠はあいつの屋敷にあるだろ」
「で、殴り込んでそれを抑えるんだな」
「ああ。警察みたいにな」
あちらの世界の話でだ。丈は言うのだった。
「あれだけ怪しい奴だからな」
「怪しいのは確かに口実にはなるけれど」
舞もそれは認めた。しかしだった。
首を捻ってだ。こう丈に言った。
「そもそもあの司馬尉が屋敷の中でも証拠を残す?」
「残さないか?」
「残さないわよ」
舞は司馬尉のことを頭の中で考えながら話す。
「そこまで迂闊じゃないわよ」
「じゃあ屋敷に殴り込んでもかよ」
「無駄よ。それに卑怯なやり方だけれど」
それでもだ。脳裏に浮かんだそのやり方も話す。
「証拠をでっちあげてもね」
「それも無理だろうな」
「それもね」
テリーとアンディが舞のその言葉に頷く。
「そうしても捏造を見破られてな」
「声高に言われるよ」
「そうよ。だから今はね」
どうすればいいのか。舞は言った。
「様子を見るしかできないわ」
「まだるっこしいな、おい」
「待つのも戦いのうちでしょ」
舞はこう言って焦りを見せる丈に言う。
「だから今は待ちましょう」
「ちぇっ、じゃあ今は食ってトレーニングしておくか」
こうしてだった。彼はその鰐の唐揚げを食べるのだった。今はそうしてだ。暴れられるその時を待つしか出来なかったのだった。
第百一話 完
2011・8・9
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