新しいムー帝国
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マントを付けたビーストも、上空の怪鳥の翼を切り裂く。湖に墜落し、迎撃しようとした首長竜ごと、ビーストはキックストライクで爆発させた。
「よし……!」
少なくとも、見滝原公園の目立つところの怪物たちは倒した。
変身を解除したハルトとコウスケは、助けた人々のところへ駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
ハルトが話しかけたのは、同年齢くらいの大学生。彼は、ハルトの手を握り返すこともなく、茫然と雪男がいたところを見つめていた。
「一体何なんだよあの怪物たちは……」
「大丈夫。今はいなくなりましたから、速く避難してください」
だが、彼にハルトの声は聞こえていなかった。首を振りながら叫ぶ。
「もう地球はおしまいだ!」
助けた人々を見渡せば、彼のような諦観に走っている者も少なくなかった。中には、泣き出しているものもいる。
その時。
「い、いえ……私は……助かるわ」
ぴしゃりと水面に撃ったかのような、女性の言葉。それは、公園で絶望しきっている人々全員に行き渡った。
OLらしき女性。彼女は立ち上がり、宣言したのだ。
「だ、だって私は優秀だもの……顔だって可愛いし……私は、ムー大陸の国民になってみせる……!」
「待て」
そんな女性を呼び止めたのは、腰が曲がった老人。彼は女性をきっと睨みながら吐き捨てる。
「儂だって優秀じゃ。若いもんには負けんぞ」
「イヤ……優秀なのはボクだ!」
それは、今まさにハルトが助け起こそうとした大学生。彼はハルトを突き飛ばし、OLと老人へ突っかかった。
やがてこの波は、公園全域に広がっていく。誰も彼もが、「自分が優秀」「新しいムーの国民になる」と宣言し、互いを罵っていた。
「ちょ、ちょっと!」
ハルトが彼らを止めようとするが、その肩をコウスケが掴む。
「コウスケ?」
「よせ。今のアイツらに、何を言っても無駄じゃねえか? 見ろ」
コウスケの言葉に、公園の……湖とは少し離れた方も見る。子供も大人も老人も。老若男女、誰も彼もが互いの悪口を言い合っている。
「何だよこれ……」
「自分だけ助かればいいとでも思ってんじゃねえか。あまりの恐怖にパニックになってやがる」
「そ、そんな……」
ハルトは、その現状に言葉を失った。だが、ムー大陸の攻撃は続く。
『おい、地上の人間たち! ムーの力はどうだ? 俺に狩られるか、俺とともに狩るか。どっちを目指すか決めたか?』
泣き叫ぶ声が聞こえる。人を攻撃する声が聞こえる。
『バリ絶望的なことを教えてやるぜ! ムーの力は、バリ終わることはねえ!』
「なっ!?」
バングレイの言葉を証明するように、先ほど倒した幽霊が、雪男が、首長竜が、怪鳥が同じ位
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