新しいムー帝国
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ハルトは呆れた声を上げた。
「じゃあ、その……スラム街? に行ってみようか?」
「ああ。……あ、結構遠いぜ?」
「俺バイクだし」
すると、コウスケは納得したように頷いた。
「いやあ、持つべき仲間はバイク乗りだぜ」
「お前俺のことタクシーか何かと勘違いしてない?」
「してねえしてねえ。じゃあ、行こうぜ?」
「ああ」
荷物をさっさとまとめたコウスケは、先導して駐輪場へ行こうとする。
可奈美には会えなかったなあと思いながら、その後に続こうとしたとき、ハルトは周囲の人々の様子に気付く。
「なあ、コウスケ」
「あ?」
「何か、おかしくない?」
「何が?」
ハルトは、周囲を指さした。
コウスケもそれにつられて見渡すが、彼も表情が強張っていく。
「何だ?」
「さあ」
誰も彼もが、空を見上げてポカンとしていた。
コウスケと目を合わせ、上空へ視線を映す。
そして。
「なんだ……? あれ」
それは、大陸だった。
巨大な円を中心に、上下へ長い突起が伸びた大陸。空の遥か遠くにそびえるそれには、複雑なディティールが所狭しと刻みこまれていた。
周囲の雲が綿菓子に見えるほど小さくなり、雲海を引き裂く。それは、雪の残る見滝原を雄弁に見下ろしていた。
「あの形状……コウスケ、あの形、なんか見覚えがあるんだけど……」
「奇遇だな。オレもだ」
コウスケは頷いた。
それは、前に山にある遺跡で見たことがある。
かつて、見滝原にいた一部民族が崇め奉った、その名前は。
「「ムー大陸!」」
ムー大陸はしばらく上空で佇み、やがて声を発した。
『あー、あー。バリ、聞こえるか?』
その声は、ハルトとコウスケには覚えのある声だった。
すでに何度も目の前に現れ、破壊という名の狩りをした存在。
「バングレイ……!」
『今、お前たちの上にあるこの超古代の大陸、ムー大陸はな? 映像だ。実体じゃねえ。安心しろ』
ハルトのスマホが揺れた。可奈美からだった。彼女もまた、公園のどこかでムー大陸の出現に驚いているらしい。
『ムー大陸は今、太平洋のど真ん中にいる。んで、俺は今のムーを支配しているバングレイっつーもんだ』
「知ってる」
ハルトは毒づいた。
『んでよ? 俺はこれから、地球の支配者になろうかなって思ってんのよ』
「支配者だあ?」
「アイツ、狩りのために地球に来たんじゃなかったのか?」
バングレイは、ハルトたちの疑問に応えることなく続ける。
『今日から地球は、俺の狩の牧場だ! これから、お前たち全人類、俺に狩られるのを待つだけになるんだ!』
だが、人々はそれぞれ頭にはてなマークを浮かべて
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