第六百十二話 わかりやすいことその一
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わかりやすいこと
ルシエンはクラスの店でコーヒーを作っていた、そうしてその味を確かめてからウェンディに言った。
「いい感じだよ」
「美味しいのね」
「うん、これはいけるよ」
「インスタントでもね」
ウェンディはルシエンに微笑んで答えた。
「やっぱり上手に作られる人とだよ」
「そうでない人いるわね」
「美味しいとね」
そう言ってもらうと、というのだ。
「僕としても何よりだよ」
「そうよね」
「うん、じゃあこのコーヒーもね」
「出すわね」
「そうしてね、それとね」
「それと?」
「いや、コーヒーってね」
それはと言うのだった。
「やっぱりはっきりした味であってこそね」
「そうであってっていうのね」
「いいよね」
「まあコーヒーで繊細な感じとかはね」
ウェンディも言った。
「あまりないわね」
「そうだね」
「素材を生かした味とかね」
「よく和食で言うけれど」
「懐石料理とか」
「エウロパのお貴族様のお料理とか」
ルシエンは連合の敵であるこの国の話もした。
「そうみたいだね」
「何かあえて調味料や香辛料をあまり使わないで」
「それでね」
「素材の味を生かしている」
「そうしているっていうけれど」
エウロパの貴族の食事もというのだ、尚それはフランス料理だけでなくイタリア料理やスペイン料理等も同じである。
「コーヒーにはね」
「それはないわね」
「そうだね」
「あれよね、地獄の様に熱くて」
ウェンディはタレーランの言葉も出した。
「絶望の様に黒くて」
「恋の様に甘くて天使の様にってね」
「そう言うわね」
「やっぱりはっきりしていて」
「それでそう言うのね」
「それがわかるね」
ルシエンはウェンディのその言葉に頷いた。
「この言葉からも」
「ええ、本当に」
ウェンディも言った。
「コーヒーははっきりした味だわ」
「そうだね」
「やっぱりコーヒーはね」
「はっきりしていないとね」
「コーヒーらしくないわ」
「だから僕もね」
「はっきりした味、つまり」
ウェンディはこうも言った。
「濃くしたのね」
「コーヒーはこうじゃないとって思って」
「アメリカンもあるでしょ」
「僕の好みで」
「それが大きいのね」
「駄目かな」
「これ位だといいと思うわ」
ウェンディはコーヒーを飲んだ実際の感覚から答えた。
「それでね」
「うん、じゃあね」
「あんたの時はその味でいくのね」
「アメリカン注文されたら合わせるよ」
そこはしっかりとするというのだ。
「注文は絶対だから」
「それは守るのね」
「お客様はもてなせ」
ルシエンは微笑んでこうも言った。
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