第二百二話 命の重さをその五
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「しかしだ」
「その実はです」
僧侶の謙二が言ってきた。
「然程です」
「離れていないな」
「そしてそれぞれの世界が重なってもいて」
「人の世界でもだな」
「それぞれの世界、道があります」
「そうだな」
「ですから餓鬼道もです」
人の世界即ち人道にもというのだ。
「存在しています」
「そういうことだな」
「そして拙僧はその輩は地獄に堕ちていると思いますが」
「餓鬼でなくか」
「そこまで外道になり果てますと」
それこそというのだ。
「最早です」
「餓鬼どころか、か」
「餓鬼も大層悪いですが」
あまりにも浅ましいが為にその報いで常に餓えや渇きに苦しめられる、獣つまり畜生より悪いとされている。
「しかし」
「それでもだな」
「まだ下があり」
「それが地獄でだな」
「亡者です」
地獄にいるそれだというのだ。
「最早」
「そうなっているか」
「その親は。間違いなく人の生を終えれば」
「地獄に堕ちるな」
「はい」
まさにというのだ。
「そうなります」
「そうなるか」
「そうした輩はです、まさにです」
「悪事もだな」
「平然と働きます」
「何の躊躇もなくな」
「己の些細な欲の為に命を捨て自分の娘を泣かせて自分の欲を満たせと迫るのですから」
そこまでのことが出来るからというのだ。
「まさに悪事なぞです」
「平然とだな」
「眉一つ動かさず」
そうしてというのだ。
「行います、それもどんな悪事でも」
「良心なぞないからだな」
「はい、ですから悪事を見付ければ」
「始末するべきだな」
「それしかありません、人の世にいて誰かを助けるなぞ」
そうした輩はというのだ。
「何があろうともです」
「絶対にだな」
「行いません、害を為すだけです」
「だからだな」
「許してはなりません」
絶対にとだ、謙二も話した。
「何があっても」
「そうだな、人間は大抵大なり小なり善であり悪だが」
「そうした亡者に成り果てた輩もいます」
地獄のそれにというのだ。
「逆もまた存在しますが」
「人でありながら神仏になった」
「その様な方も」
「そうだな、悪もあれば善もある」
その両方がというのだ。
「そして善も悪も一つではない」
「百人いれば百人の正義がある」
奈央が言ってきた。
「それはね」
「それもあるな」
「そう、ただね」
「それでもだな」
「吐き気を催す邪悪、卑しくて見下げ果てた」
「そうした輩もいる」
「そして黄金の精神、素晴らしい心を持った人も」
吐き気を催す邪悪もあればというのだ。
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