第三話 少しずつでもその十二
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「そんなところだったからな」
「埼玉には行きたくないの」
「ああ」
焼酎を飲みながら肯定した。
「どうもな」
「じゃあ群馬とかは」
「もっと嫌だな」
酔っているので本音がそのまま出た。
「茨城も栃木もな」
「嫌なのね」
「遠いからな」
東京からはというのだ。
「通えないしな、家からだと」
「単身赴任よね」
「ああ、お前と母さんは東京に残ってな」
そうしてというのだ。
「父さんはな」
「そこで単身赴任ね」
「それも、だからな。千葉県の先の方でもそうなるな」
「館山とかだと」
「そうなるな、けれどまだ単身赴任の方が踏ん切りがつくか」
「もうそれならって」
「かえってな」
そうなると、というのだ。
「まだな」
「じゃあ群馬や茨城はなの」
「栃木もな」
「埼玉よりはなのね」
「そうかもな」
「何処まで埼玉嫌なの?」
「気持ちの問題だな」
娘に焼酎を飲みながら話した。
「それは」
「埼玉だからなの」
「結局はそうか」
「本当に埼玉嫌いなのね」
「嫌いというか気分の問題だ」
「その辺りの草でもっていう」
「あと埼玉埼玉って言ったりな」
これはインターネットのスラングにもなっている、何故か埼玉県はこちらでも人気になっているのだ。
「それでだ埼玉とかく埼玉とかな」
「言われてるから」
「だからな」
「嫌なのね」
「東京がいいな」
「ううん、そんなに東京っていいかしら」
「あちこち行ってみればわかるさ。お前も」
父は咲に笑って話した。
「東京で生まれて育ったならな」
「やっぱり東京が一番だって」
「そのことがな」
「そういうものなのね」
「ああ、本当にな」
父は焼酎を飲みつつ咲に応えた、そうしてだった。
咲はその父との会話を終えるとまた雑誌に目をやった、そうしてファッションのこともメイクのことも学んでいった。
第三話 完
2021・2・15
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