第百話 夏侯淵、定軍山に向かうのことその六
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「どちらにしろ調べさせる訳にはいかないわ」
「はい、あの山は最高の霊山です」
「私達がこの世を滅ぼす力を蓄えるに最適です」
「ですから多くの結界を設けています」
「力を蓄える為の結界を」
「その結界を壊されては困るわ」
だからだというのだ。
「だからどちらにしてもね」
「はい、そこに入る者達はです」
「必ず消さねばなりません」
妹達も姉に話す。
「ではすぐにです」
「あの山に向かい」
「そうするわ。ただ」
ここでだ。司馬尉はこうも言った。
「私達はあの山には行けないわ」
「といいますと」
「何かありますか」
「ええ。都でやることがあるわ」
それでだというのだ。彼女達は都から動けないというのだ。
「都で。劉備達をね」
「失脚させる為にですね」
「謀を仕掛けますか」
「そうするわ。あの娘達に朝廷にいてもらっては」
その整った夜の世界の美貌を歪めさせて。司馬尉は言った。
「邪魔よ。どちらにしてもね」
「そうですね。ではどうして失脚させますか」
「あの娘達を」
「宦官を使うのもいいわね」
司馬尉の顔にだ。邪なものが宿った。
そしてその邪なものを顔に徐々に出しながらだ。妹達に話す。
「汚職をでっちあげたり」
「若しくは謀反を企てていた」
「証拠は捏造して」
「そうしてですね」
「陥れますか」
「その為にもね」
どうするかというのだ。
「今は都を離れる訳にはいかないわ」
「では。山のことは彼等に任せて」
「私達はですね」
都に残るのだった。そうしてだった。
実際に都にだ。不穏な噂が流れだしていた。
その噂を聞いてだ。関羽が顔を曇らせて孔明に言った。
「私達が謀反を企てているとだ」
「はい、近頃そうした話が出ていますね」
「姉上が皇帝になられる」
こうした話だというのだ。
「そうした噂だな」
「桃香様は皇族ですし」
かなりの傍流でもだ。劉氏は劉氏なのだ。
「それにです」
「そうだな。しかもだ」
「摂政、王の位も頂いています」
「徐州に益州の牧でもある」
「今や我が国随一の権限を持たれています」
功によりそうなったのだ。黄巾の乱と董卓の騒ぎを主に収めたことと皇族であることが評価されてだ。彼女は瞬く間にそこまで至ったのだ。
だが、だ。それだからこそというのだ。
「その桃香様が謀反を企てるとなると」
「少なくとも野心を抱いてもか」
「不思議ではありません」
そう判断されても仕方ない、それが今の劉備だった。
孔明はこのことを見てだ。関羽に話すのだった。
「だからです」
「噂が出てもおかしくはないな」
「こうした話は歴史において常でした」
孔明は目を曇らせて述べた。
「皇族、若しくは王族同士の位の奪い合いは」
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