第百話 夏侯淵、定軍山に向かうのことその五
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「美羽様のお話ですととても一日でできるものではありません」
「それも一人でとなると」
「そうじゃ。絶対に無理じゃ」
袁術もそれは断言する。
「どういう奴なのじゃ。あ奴は」
「只でさえ首が背中にまで曲がりますし」
「まるで狼の如く」
「あれも怪しいことじゃ」
袁術は司馬尉の首のことも話した。
「ううむ、司馬尉という者は」
「はい、まことに怪しいです」
「そうとしか思えません」
「恐ろしい奴じゃ」
袁術も歯噛みして言う。
「若しあの娘が本格的に敵となるとじゃ」
「厄介ですね」
「その時は」
そうした話をしてだった。袁術達は司馬尉に恐ろしいものを感じたのだった。
その司馬尉はだ。平然としてだった。
妹達にだ。こう話していた。
「あの程度の仕事はね」
「お姉様にとってはですね」
「どうということはありませんね」
「そうよ。私を誰だと思っているのかしら」
己の机に座りだ。その前に立っている妹達に話すのである。
「司馬尉仲達よ。次の王朝の主よ」
「その姉様ならばですね」
「あの程度のことは」
「ええ、造作もないわ」
またこう言う司馬尉だった。
「曹操や袁紹なぞ問題ではないわ」
「全くですね」
「あの娘達にしてもですね」
「あの娘達は私を敵視しているけれど」
それでもだ。司馬尉から見ればだというのだ。
「私にとっては彼女達はね」
「敵ではありませんね」
「全くですね」
「そうよ。何ということはないわ」
また言う司馬尉だった。
「所詮はね」
「では彼女達もですね」
「やがては」
「ええ。私が晋を築いた時に」
彼女の王朝の名は決まっていた。既にだ。
「あの娘達は真っ先に生贄になるわ」
「晋の。血の帳の中にですね」
「最初に消えますね」
「そうなるわ」
こう言うのである。
「あちらの世界の者達もね」
「どうやらあの者達ですが」
「私達を倒す為にですね」
「この世界に送り込まれた様です」
「その様です」
「そうね。どうやらね」
それはだ。司馬尉もわかっていた。
そうしてだ。こうも言うのだった。
「けれどそれでもね」
「所詮はですね」
「止められはしないわ」
とてもだ。それはできないというのだ。
「絶対にね」
「そうですね。私達と同志達」
「オロチの者達もいますし」
「それに于吉殿達も」
「求めることは同じよ」
司馬尉は言った。心でつながっているのではなくだ。欲するものが同じだからだ。彼等は今は結託して共に動いているというのである。
そのことをわかってだ。司馬師と司馬昭も話す。
「では。その同志達と共に」
「今はですね」
「定軍山で、ですね」
「あの娘達を」
「消しておきましょう」
「定軍山は我等の拠点
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